まず実戦と実践の意味や使われている文の事例について簡単にわかりやすく説明します。
■実戦の意味と使われている文の事例
★意味
”訓練や演習ではない、戦いや試合”を意味します。
実戦という言葉は、軍事用語やスポーツ関係でよく使われています。
新聞やテレビ等では以下のように使われています。
★実戦という言葉が使われている文の事例
・イスラエル軍は、建国以来4度大きな戦争をしているので実戦経験が豊富だ。
・MLBのエンゼルスは、怪我から復帰した大谷翔平選手に実戦を積ませるために3Aの試合にも出場させることになった。
・サッカー日本代表の堂安選手は、ワールドカップでの実戦経験が全くない。
要するに戦争やスポーツのように”戦い”が生じるような物事については、
戦争なら演習、スポーツなら訓練と”実戦しない場合”もありますので、それらと区別するためにこれは”演習や訓練ではありませんよ”という意味をこめる場合に実戦という言葉を用いいています。
また、日本の自衛隊とアメリカ軍が実戦さながらの演習をしたというように”演習だけどほぼ実戦レベル”であることを伝えたい場合、このような言い回しで実戦を使うことがあります。
つまり、実戦は、訓練や演習のほぼ反対語に近い意味があります。
★実戦の英語訳
Actual warで直訳すると現実の戦争となります。つまり、実戦は文法的観点からは名詞になります。
■実践の意味と使われている文の事例
★意味
理論・主義などに基づいて実際に行うこと。
ex
マーケティング理論に基づいて、プロモーションを実践してみた。
★類語
実践とほぼ同じ意味を持つ言葉としては、実行があります。
★実践という言葉が使われている文の事例
・授業におけるICT活用は既に、開発や啓発のフェーズではなく、実践・普及のフェーズに入っています。
・経営理念は、会社の向かう方向や考えを示すために必要なものです。
でも、それを実践できなければ意味がありません。
・ロシア革命で、ボリシェキビの指導者のレーニンは、マルクスの共産主義理論を実践して、人類初の共産主義政権を確立した
・本校は、数学については、独自のカリキュラムに基づいて、日々の教育を実践しています。
★実践の英語訳
Practiceは、練習・訓練、練習・訓練する です。つまり、実践は文法的観点からは名詞でもあり動詞としても用いられています。
ちなみに実践を学校名に冠している東京の実践女子大学は、以下のような教育理念を掲げています。
★自立自営しうる実践力のある女性の育成
本学園のもう一つの重要な教育理念は、自立自営しうる実践力をもった女性の育成です。そのために、本学園は、学問や教養を身につけるだけでなく、それらを応用し、活用しうる力を身につけること、そして、仕事や生活、社会に役立てることのできる実践的な知識・技術を修得することを一貫して重視してきました。
こうしたいわば「実践主義」こそ、下田が本学園の名称に込めた教育理念・思想であり、建学以来変わらない本学園のもう一つの重要な教育理念です。
上記のように学問や教養を身につけるだけでなく、それらを応用し、活用しうる力を身につけることを「実践主義」としています。
この理念からは、学問や教養は社会に役立てるように実践することに意義があるので、そのような力を身につけることを教育目標に掲げています。
つまり、実践=学問や教養、理論から得た知識を自ら実行する ということを意味しているのです。
■実戦と実践の違いとは?
★意味の違い
・実戦=訓練や演習ではない、実際の戦い・試合。
・実践=主義・理論などを実際に行うこと
つまり、実践が”理論や主義→実践”という流れがあり、まだ実現していないものを実行してみて、本当に出来るかどうか確かめるというような意味も含まれているのが特長です。
ですので場合によっては、実践してみて上手くいかないということもあり得ます。
対して、実戦は、”国際試合で実戦経験を積ませる”というように実践と違い、”本当に出来るかどうか確かめるというような意味”は全くないのが特長です。
ですので、”サッカーの試合で○○監督の戦術を実践してみた”という言い方は成り立ちますが”試合を実践してみた”とは言いません。
これは、”サッカーの試合自体”は相手チームと敵のチームが11人そろい、審判がいれば実践しなくても実現するのは疑いの余地がないのに対し”○○監督の戦術”は実際に試合の中でプレイしてみないと上手くいくかどうかわからないからです。
別の言い方をすると”理論をそのまま実行してうまくいくか試す”テスト的な要素もあるのが実践で、”既に決まった相手と決まったルールで戦うことで経験を積む”的な言葉が実戦ということになります。
●まとめると
実践=場合によってはうまくいかない可能性のある理論や主義等を実行する意
実戦=既に決まった相手と決まったルールで戦うことで経験を積むために実行する意
★文法的な観点での違い
・共通項
実戦も実践も文法的に名詞と使われること
・違い
実践は、”実践する”というように動詞としても使われるのに対し、実戦は動詞ではないので、”試合を実戦する”というような言い方は出来ないことが文法的な観点での違いになります。
■実戦と実践の使い分けについて
実践=名詞でも動詞としても用いられる
実戦=名詞で動詞としては文章で使うことはできない
※従って試合を実戦する=× 試合で監督の戦術を実践する=○となります。
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