この記事では、女流棋士、里見香奈女流の登場で注目を浴びている棋士編入試験について、仕組みや過去の実績、里見香奈女流に対戦相手や
試験に合格する可能性についてアマ強豪の?三段がわかりやすく説明していきます。
プロ棋士編入試験とはどんな制度?
※編入試験の名称は『プロ編入試験』でしたが、折田翔吾アマが受験する試験から『棋士編入試験』に名称が変わりました。
「棋士編入試験」は奨励会以外でプロ棋士になれる試験です。
ただし、かなりの特例であり、今まで棋士編入試験の受験資格を得た人は、今泉健司、稲葉聡、加來博洋、折田翔吾、里見香奈の
5人しかいません。
アマチュア棋士の世界で好成績を残し、プロ棋士にも劣らない実力を持つ人だけが棋士編入試験を受験することができます。
現在の規定では四段のプロ棋士相手に5番勝負を行い、3勝を挙げれば合格となり、4月1日付もしくは10月1日付(いずれか近い日付)でプロ棋士(フリークラスの四段)となります。
なぜ編入試験制度が導入されたのか?
・編入試験制度導入の経緯
瀬川晶司のプロ編入がきっかけになります。
瀬川は1996年に奨励会の三段リーグを26歳の年齢制限によって退会してしまいましたが、その後もアマチュア選手としてプロの公式戦でも好成績を残し、
プロを相手に勝率7割を超える戦績をあげていました。
2005年2月28日、日本将棋連盟にプロ編入の嘆願書を提出。
この嘆願書に対し、プロに匹敵する実力があるのだから瀬川のプロ編入を認めるべきだという意見と、三段リーグを勝ち抜けなかったのだから編入を認めるべきでないという意見に二分されていました。
2005年5月26日、棋士総会が行われ、特例として瀬川のフリークラス編入試験を実施することに決定しました。
その後、瀬川は11月6日の第5局に勝利して3勝目を挙げ、プロ入りが決定しました。
またその後、2014年4月に「プロ編入試験」が制度化され、2019年10月に「棋士編入試験」と名称が変更されました。
・女流棋士制度との関係
「プロ棋士」と「女流棋士」は全くの別の制度で、女性限定の制度です。
以下の3条件のいずれかで女流棋士になることができます。
1.日本将棋連盟の「研修会」(奨励会とは別物である)に入会して、C1クラスへ昇級
2.アマチュアが出場できる女性棋戦で、ベスト8以上になる
3.日本将棋連盟の「奨励会」に入会、2級以上で退会する
編入試験制度ができる前にアマからプロになった故花村元司九段とは
故花村元司九段は、アマ時代にその強さから「東海の鬼」という異名で名を馳せました。
当時のプロトップの升田九段と香落ちの手合いで指し分けするほどの実力を示したことで、周囲からプロ入りを推挙する
声が広まり、1944年に花村のためにだけに異例のプロ五段試験の実施されました。
花村はこの試験で、和田庄兵衛・奥野基芳・小堀清一・大和久彪といった当代の新進気鋭のプロ棋士を相手に六番勝負で4勝2敗という結果を上げて合格、
プロ棋士になりました。
花村はその後、プロ将棋最高峰のA級にまで昇りつめ、名人戦に挑戦者として登場しています。
プロ養成機関の奨励会を経ずにA級にまで昇級できたのは、現在に至るまで花村九段だけです。
編入試験の受験資格・受験手続について
日本将棋連盟によると、棋士編入のための試験規定は以下の通りを定められています。
<試験日>
申請受理月の2ヶ月後から開始、1ヶ月に1対局
<試験会場>
原則として「東京・将棋会館」または「関西将棋会館」
<申込書類>
試験申込みの際に下記書類を日本将棋連盟総務部へ提出する
・受験申込書(連盟所定のもの)
・履歴書(顔写真添付)
・最終学業成績証明書
・健康診断書
<受験料>
50万円(税別)
<受験資格>
・現在のプロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士の希望者
・四段以上の正会員の推薦のある者
<申請期間>
受験資格の成績を得た後から1ヶ月以内
編入試験はどのようにおこなわれるのか?
<試験内容>
プロ棋士との5番勝負(試験官は新四段5名を棋士番号順に選出)
※持時間3時間
※対局は将棋連盟の公式戦対局規定に準ずる
※1局目に振り駒、以下5局まで先後交代
※5対局中3勝で合格、フリ―クラスへの編入資格を得る
※合格者は4月1日付または10月1日付で四段となる
過去の編入試験の結果
今までに棋士編入試験受験資格を得たのは今泉健司、稲葉聡、加來博洋、折田翔吾、里見香奈の5名です。
そのうち、稲葉聡、加來博洋の2名は申請しませんでした。
全員が奨励会退会者であり、稲葉以外の4名(今泉、加來、折田、里見)、また特例扱いの瀬川についてはいずれも奨励会三段退会者です。
棋士編入試験の受験資格を得た者
受験資格者 編入試験 結果
(5番勝負)
今泉健司 10勝4敗 3勝1敗 /合格
稲葉聡 10勝4敗 (申請せず)
加來博洋 10勝4敗 (申請せず)
折田翔吾 10勝2敗 3勝1敗 /合格
里見香奈 10勝4敗 ( 試験 2022年8-12月 )
制度化以前(ともに6番勝負)
花村元司 – 4勝2敗 /合格
瀬川晶司 17勝6敗 3勝2敗 /合格
編入試験で里見女流4冠の対戦相手
プロ棋士編入試験の日程は8月以降1か月に1局のペースで、対戦相手(試験官)は、
徳田拳士四段、岡部怜央四段、狩山幹生四段、横山友紀四段、高田明浩四段の5人の棋士です。
里見香奈女流が試験に合格する可能性について
里見香奈女流は、この1年間でもトップから2番目のB1クラス在籍の澤田七段や叡王戦で藤井5冠に挑戦した出口六段
等、上位クラスの棋士にも勝っていますので、合格する可能性は高いと思います。
また、里見香奈女流が奨励会在籍時に試験官となる5人の棋士のいずれとも対局したことがあるため、過去の対局をもとに
戦法の研究をすることができることも有利に働くと思います。
最近の里見女流の将棋内容をみると、上位クラスの棋士に対しても序盤から攻撃で圧倒したり、終盤で逆転したり
と内容的にも質の高い将棋を展開しています。
ですので、プロ入りしたばかりの試験官相手に対しては、里見女流も自信をもって対局に臨めると思います。
以上から8割くらいの確率で編入試験に合格すると推測します。
里見女流4冠が棋士になったらどうなるのか?
棋士編入試験に女流棋士が合格した場合、史上初の女性棋士誕生となります。
日本将棋連盟の規定によると女流棋戦とプロ棋士公式棋戦の両方への出場が認められます。
女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、また女性奨励会員が四段の資格を得た場合の規定を下記の通りです。
1.女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、女流棋戦、及びプロ棋士公式棋戦の両方に出場することが出来る。
2.奨励会に所属している女性が四段に昇段をした場合、女流棋士申請を行うことが出来る。ただし、申請期間は昇段日から2週間以内とする。
まとめ
今回は棋士編入試験についてまとめてきました。奨励会以外でプロ棋士なれるこの試験は、かなりの特例であり、
まだ歴史の浅いシステムのなで、将棋が詳しくない方に説明するのは大変ですよね。
今回のまとめで少しでも分かって頂けたら幸いですが、いかかでしたでしょうか?
最後に振り返りとして、今回解説した「棋士編入試験」についてのポイントをまとめます。
①プロ棋士編入試験とはどんな制度?
アマチュア選手や女流棋士が、合格すれば奨励会を経ることなく棋士となれる制度です。
②編入試験の受験資格・受験手続について
<受験資格>
・現在のプロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の
成績を収めたアマチュア・女流棋士の希望者
・四段以上の正会員の推薦のある者
<受験手続>
受験資格の成績を得た後から1ヶ月以内に申し込みを実施します。
試験申込みの際に必要書類を日本将棋連盟総務部へ提出します(受験料50万円)。
③編入試験はどのようにおこなわれるのか?
試験の内容はプロ棋士との対局5局で、3勝すれば合格となります。
(試験官は新四段5名を棋士番号順に選出)
※持時間3時間
※対局は将棋連盟の公式戦対局規定に準ずる
※1局目に振り駒、以下5局まで先後交代
※5対局中3勝で合格、フリ―クラスへの編入資格を得る
※合格者は4月1日付または10月1日付で四段となる
④過去の編入試験の結果
正式に制度化されてからの受験者は今泉健司、折田翔吾の2名だけで、2名とも合格しています。
・今泉健司:3勝1敗 /合格
・折田翔吾:3勝1敗 /合格
⑤編入試験で里見女流4冠の予想される対戦相手
プロ棋士編入試験の日程は8月以降1か月に1局のペースで、対戦相手(試験官)は、徳田拳士四段、岡部怜央四段、狩山幹生四段、横山友紀四段、高田明浩四段の5人の棋士です。
⑥里見女流4冠が棋士になったらどうなるのか?
棋士編入試験に女流棋士が合格した場合、史上初の女性棋士誕生となります。日本将棋
連盟の規定によると女流棋戦とプロ棋士公式棋戦の両方への出場が認められます。
里見女流だけでなく、多くのトップアマや女流棋士が受験する可能性のある棋士編入試験。
これからもぜひ注目していきたいですね!!
今回は、「棋士編入試験」についてまとめさせて頂きました。少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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