将棋の野原未蘭アマのその強さの秘密とは?女流プロ・奨励会入りの可能性は?

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ここ数年、アマプロ問わず女性棋士の棋力の向上が著しく、特に女流プロの里見六冠は、男性プロ棋士に勝ち越す等、目覚しい活躍をしています。

アマ将棋でも女性の活躍が目立っています。

中でも富山市立岩瀬中学3年在学中の2018年、中学生名人戦で優勝した野原未蘭アマは、注目の的となっています。

野原未蘭アマは、創設から42年もの間、男子生徒だけが優勝してきた中学生将棋日本一を決する中学生名人戦で史上初めてとなる女子生徒として優勝を果たしたことで一躍女性アマ強豪棋士としての地位を確立しました。

中学生名人戦の歴代優勝者には、元名人丸山忠久現九段、元棋聖の屋敷伸之現九段等、トップクラスのプロ棋士になった例が多く、並大抵の棋力では優勝できません。

これだけでも野原未蘭さんがアマ女性最強と評されるのが理解できるのではないかと思います。




野原未蘭さんがどれだけ将棋が強いのか?その秘密について、将棋アマ三段の筆者の視点からわかりやすく説明します。

■将棋の野原未蘭アマのその強さの秘密とは?女流プロ・奨励会入りの可能性は?■

まず、野原未蘭アマがどれだけ強いのかを知っていただくために、これまでの主な将棋イベントでの実績についてまとめてみます。

■野原未蘭さんのアマ将棋での実績

・2017年 
アマ女流名人戦 優勝

・2018年 
中学生名人戦 優勝

全国中学生選抜将棋選手権大会女子の部優勝

アマ女流名人戦 優勝

第41期 朝日アマ将棋名人戦の決勝トーナメントで女性として初めて2回戦進出

・2019年
第32回全国高等学校将棋竜王戦富山県大会代表
富山第一高等学校

アマ女流名人位を連覇したことで、地元富山県でも注目を集めています。

アマ女性最強と評される野原未蘭さんは、すでにプロ女流棋士とも数多く対局、ほぼ5分の成績を記録しています。

特に女流プロでも実力者として知られる千葉涼子 女流四段や矢内理絵子 女流五段に勝利していることから、既に女流プロレベルの棋力に達しているといっても過言ではありません。

■野原未蘭アマのプロ女流棋士との対局結果一覧

★2019年

・7月20日 マイナビ女子オープン 予選
負け カロリーナステチェンスカ 女流1級

・6月23日 女流王座戦 二次予選
負け 上田初美 女流四段

・5月11日 女流王座戦 一次予選
勝ち 千葉涼子 女流四段

・5月11日 女流王座戦 一次予選
勝ち 礒谷真帆 女流初段

・5月10日 倉敷藤花戦
負け 中村真梨花 女流三段

・4月13日 倉敷藤花戦
勝ち 矢内理絵子 女流五段

★2018年

・12月27日 女流王将戦 予選
負け 野田澤彩乃 女流1級

・7月7日 マイナビ女子オープン 予選
負け 竹俣紅 女流初段

・7月7日 マイナビ女子オープン 予選
勝ち 伊奈川愛菓 女流初段

・6月21日 YAMADA女流チャレンジ杯
負け 山根ことみ 女流初段

・6月21日 YAMADA女流チャレンジ杯
勝ち 頼本奈菜 女流初段

・6月21日 YAMADA女流チャレンジ杯
勝ち 武富礼衣 女流初段

・5月12日 女流王座戦 一次予選
負け 山根ことみ 女流初段

・5月12日 女流王座戦 一次予選
勝ち 安食総子 女流初段

・3月28日 倉敷藤花戦
負け 堀彩乃 女流2級



■あの天才棋士藤井聡太七段とも対局

野原未蘭アマは、藤井聡太七段が新人王を獲得した2018年に、新人王戦 新春対局という記念対局でアマ女流名人の資格で角落ちで対局しています。

対局結果は、藤井七段の勝ちでしたが、野原さんの将棋内容は、天才棋士相手に堂々たる指しっぷりでした。

ちなみに筆者は、アマ三段ですが藤井聡太七段と指導対局するなら、飛車角2枚落ちでも手も足も出ないでしょう。
というか、あの藤井七段との対局というだけで心臓バクバクになりそうです。

■野原未蘭アマの棋力はどれくらい?

野原未蘭アマは、去年、全国のアマ将棋強豪が集う、朝日アマ名人戦の決勝トーナメントで1回戦に勝利しました。

朝日アマ名人戦は、全国47都道府県ごとの予選を勝ち抜いた県代表だけが参加できる、アマ将棋最高レベルの将棋イベントです。

県代表クラスは、将棋アマ5段レベルでないとなれませんので、野原未蘭アマは、アマ5、6段レベルの棋力はあるものと思います。

アマ5、6段レベルであれば、男性プロ棋士にも勝つことも可能なレベルです。




野原未蘭アマは、高校1年生にして、男性を含めたアマ将棋トップクラスの棋力を得ていますがその強さの秘密は、異色の将棋戦法にあります。

■野原未蘭アマの強さの秘密「英春流かまいたち戦法」とは?

野原未蘭アマの強さの秘密は、元奨励会員でプロ棋士まであと一歩のところで年齢制限でプロへの道を断たれた鈴木英春元奨励会三段直伝の「英春流かまいたち戦法」にあります。

「英春流かまいたち戦法」は将棋の定跡からは、全くの異端の戦法で、例えば、初手からまずあり得ない端歩をつく、6二銀といったような指し手が特長です。

対局相手からすると初手から、未知の世界に入りますので、その時点で動揺しがちなことにこの戦法の優位性があります。

特に初めて対戦することの多い、トーナメント戦で威力を発揮します。

筆者にもアマ将棋トーナメント参加の経験がありますが、初手からこんな異色な手を指されたら、動揺すること必至です。

野原未蘭アマが、女子として史上初めて中学生名人戦に優勝できたのは、ひとえに「英春流かまいたち戦法」にあると思います。

「英春流かまいたち戦法」がどんなものかは、下記の動画をみるとよく理解できると思います。

とにかく、将棋の指し手の常識ともいえる初手に角道をあける、飛車先の歩をつくということにこだわらないのが特長です。

■野原未蘭アマの女流プロや奨励会入会の可能性は?

★奨励会入会には遅すぎ?

野原さんは現在、富山第一高等学校の1年生です。

高校生として初めて参加した第32回全国高等学校将棋竜王戦の富山県代表になる等、快進撃が続いています。

気になるのは野原さんがプロ棋士の登竜門であるプロ養成機関である奨励会に入会して
男性と同じ土俵でプロ棋士を目指すのか、プロ女流棋士を目指すのかということです。

ただ、小学生からの入会が珍しくない奨励会となると現在高校1年生の野原さんの年齢は、遅すぎるともいえます。

実際、野原さんは奨励会に入会する希望は持っていないようです。

★女流プロ棋士を目指す別ルートとは?

女流プロ棋士を目指す場合は、まず将棋連盟の「研修会」に在籍。

そこで一定の成績をあげることで女流プロ棋士になるというコースがあります。
このコースはいうなれば女流プロへの正規ルートのような存在です。

しかし、野原さんはこの正規ルートにも入ることなく、現在も”英春流 将棋晩成塾”で学び続けています。

2018年にアマ女流名人連覇を達成した後に、野原さんは”規定の女流棋戦でベスト8以上に進出し、女流棋士申請資格の取得を目指す。”と今後の抱負を述べています。

従って、野原さんは”女流プロ棋士を目指す別ルート”ともいえる”アマチュア枠として参戦可能な規定の女流棋戦でベスト8以上”を達成することで女流プロ棋士を目指しているのです。



★女流プロになれる可能性は?

野原さんは、2018年からアマチュア枠として参戦可能な規定の女流棋戦に参戦して、ほぼ5分の成績を残していますので女流プロになれる可能性はかなり高いでしょう。

ただ、女流プロになってからも「英春流かまいたち戦法」が通用するかについては、未知数です。

かつて、男性のプロ将棋棋士に花村元司九段という真剣師あがりの棋士がいました。
花村九段は、奨励会を経ずにアマにしては強すぎるということで特例で編入試験を経てプロ入りしました。

プロ入り後も活躍、最高位のA級まで昇りつめましたが、当時、無敵といわれた大山康晴名人には全く歯が立ちませんでした。

花村九段は、「英春流かまいたち戦法」に通じる、定跡にこだわらない戦法を得意にしていました。

そのプロではあり得ない奇手を繰り出す棋風から、”妖刀流”と恐れられたものです。

しかし、大山名人にはまるで”赤子の手をひねる”かのように負け続けました。

そのとき、花村九段は”将棋の定跡の大切さ”を身にしみて感じたと語っていました。

ですので、野原アマも今の対戦相手には通じる「英春流かまいたち戦法」がいずれ、壁にぶちあたるのではないかと思います。
女流プロのレベルも近年、著しくアップしていますので、現在の戦法がそのまま通用するほど甘くはないでしょう。

その壁を乗りこえることができれば、日本を代表するトップ女流プロになれるのではないかと思います。

■まとめ

①野原未蘭アマのその強さの秘密は、元奨励会3段の鈴木英春三段直伝の「英春流かまいたち戦法」にあります。

②野原未蘭アマの棋力は、アマ将棋の県代表クラス。段位では5~6段の棋力があり、プロ女流棋士とすでにほぼ互角の戦績を記録しています。

③野原未蘭アマは、奨励会入りは目標にしていませんが、”アマチュア枠として参戦可能な規定の女流棋戦でベスト8以上”を達成することで女流プロ棋士を目指しています。



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