今回は、丸山宗利の「昆虫はすごい」を、私の感想とともに本の内容を簡単にご紹介致します。
本の属性
今回ご紹介する「昆虫はすごい」は、丸山宗利という博物館で教授をされている昆虫学者の方が発表した本です。
光文社新書から、2014年に発売されています。
昆虫の多彩な生態を人間の暮らしに通ずるように描く「擬人化のおもしろさ」が話題となり、ベストセラーに繋がったようです。
購入したきっかけ
端的に言ってしまえば、昆虫に興味があったからです。
虫はわれわれの生活にとても身近な存在です。
世の中には沢山の昆虫がいて、それぞれが生存や繁殖のために各々が独自の進化を遂げてきています。
しかし、カブトムシやチョウのようなメジャーな昆虫や、一部の不快害虫のような存在でもない限り、あまり気にかけることがありません。
変態(幼虫から成虫への成長)やその飛行能力のように、昆虫は人間にはできないことを当たり前にやってのけています。
そんな「ありふれてるけど実は凄いやつら」である昆虫の魅力に、改めて迫ってみたいと思い、購入に至りました。
概要
一つ一つの事例について紹介していくとキリがないので、本の構成についてご紹介致します。
第一章どうしてこんなに多様なのか
昆虫の定義や、何故このように多様性を獲得できたのかということを通して、「昆虫がどういった存在であるのか」ということを教えてくれます。
第二章たくみな暮らし
食物の確保、色鮮やかな体色や擬態、繁殖形態やその棲み家等を通して、「昆虫の暮らしぶり」についてを紹介する章です。
第三章社会生活
社会を持つ昆虫、その中でも特に「蟻」を通しての章となります。
「昆虫が作り出す社会の多様さ」と「それを取り巻く環境」についてお話されています。
第四章ヒトとの関わり
感染症や、昆虫の家畜であるカイコ、身の回りの危険な虫、嫌われる虫と好かれる虫等の文章を経て、「人と昆虫との関係」が描写されています。
この他、冒頭の「はじめに」と巻末の「おわりに」が含まれます。
以上がこの本の内容の簡単な概要となります。
感想
まず感じたのは、昆虫の本であるのに「人」の存在を強く意識しているな、ということでした。
上記の概要でもご紹介致しましたが、この本は昆虫の存在がどういったものか、ということから始まり、その暮らしぶり、社会を持つ昆虫があること、最後に人との関わりを描くという構成になっております。
全編を通して、求愛行動や住居(巣)、社会を持ったり、争いを行ったりと、我々の暮らしにも通ずる部分がよく描かれており、我々の生活もまた、昆虫たちに影響を与えていることがわかります。
犬がお手をしてくれると、こちらの意図が通じたようで嬉しくなるように、大きさも見た目も全く違う遠い存在だった昆虫も、なんだか近しい存在のように感じられました
ただし、丸山宗利も文中で言っていますが、昆虫は生存・繁栄のための「本能」による行動なのに対し、人間のそれは「学習」によるもので、その目的も生存や繁栄とは限りません。
似たような行動を取っていても、昆虫と人間ではそういった点で「意味」が異なると念押しされていました。
ではなぜ、この誤解されるかも知れないような構成になったのでしょうか。
これは「おわりに」でわかったことですが、この構成は昆虫という存在に親しみを持ってもらうための創意工夫だったようです。
服を着たり、恋人へプレゼントしたり、農業を営んだりといった人間の普段の行動を、昆虫も似たようなことをやっているんだよと描くことで、その生態わかりやすく、親しみをもって迎えられるように伝えようとしたのだと思います。
読み終わってみると、その「意味」の違いはそれほど重要ではないようにも思われます。
しかし、繰り返し主張されていましたし、誤解を避けるためにも、文章の匙加減にはさぞ苦労されたことかと思います。
「昆虫」、あるいは「人間」を知る上でも、それはおそらく大事なポイントなのだろうと感じました。
この一貫したコンセプトのおかげで、この本は知識や研究の事実を並び立てるだけの物にとどまらず、読み物としての統一感を与えてくれています。
個人的にですが、こういう本の役割は、「専門的な内容を一般人にもわかりやすく伝える」ことだと思っています。
昆虫への興味を持ってもらうという点で、素晴らしい工夫です。
文章も平易で、堅苦しいお勉強感やお説教感は全くありません。
こういった様々な工夫と情熱が、この本をベストセラーに至らせたのでしょう。
今回、感想では具体的な内容については殆ど触れませんでした。
どうしても半端に引用することになってしまいますので、それではトリビアの紹介にしかならず、かえって誤解を生みかねないと思ったからです。
この本は虫好き以外の方にも売れているようです。
虫が苦手な方にも、とまでは言いませんが、少しでも興味のある方は是非、手にとってみて下さい。
読み終わる頃には、昆虫への興味がすっかり深まり、もっと知りたいとすら思えるようになるはずです。
本の総合評価(100点満点)
90点
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