2018年11月に行われたアメリカ中間選挙で、下院では政権党の共和党が民主党に敗北、一方、上院では共和党が多数を占めました。
アメリカ連邦議会の上院と下院の違いやその権限についてわかりやすく・簡単に説明します。
■アメリカ上院と下院の任期や選挙方法の違い
★任期の違い
・上院
アメリカ上院は任期6年となっています。解散はありません。
任期が6年ということと解散がないという点では、日本の参議院と同じです。
・下院
アメリカ下院は任期2年です。解散はありません。
下院は、任期満了は4年であるものの解散が約2年で行われる衆議院に似ています。
下院の任期が2年というのは短いですが、国民側のメリットとしては、政治に対する不満を短期的に投票行動で表しやすいということがあります。
★選挙方法の違い
・下院
下院議員選挙は、2年に一度、11月の第1 月曜日の翌日の火曜日に行われます。
改選対象は全議員になります。
定数は、435名。
・上院
上院議員選挙は、2年に一度、下院議員選挙と同時に行われ、全議席のうち3分の1が改選の対象になります。
この点で、3年に一度半数が改選される参議院選挙に似ています。
定数は、100名。
■アメリカ上院と下院の権限や選挙制度の違い
★選挙制度の違い
・上院
アメリカの50州から各2名が選出され、合計100名の議員から構成されています。
上院議員は州の人口が少なくても多くても各州から2名の定数が割り当てられています。最も人口の少ないアラスカ州も最大の人口を誇るフロリダ州も上院議員は2名選出されます。
日本の選挙にたとえると、最大の人口を抱える東京都と最も人口の少ない鳥取県がどちらも国会議員が2名選出されるということになります。
この点で、一票の格差を是正するため、合区する等、選挙区を強引に合併させる日本の参議院とは、大きな違いです。
アメリカ議会制度の初期のころには、上院が州の代表を選出するという性格から、各州の州議会で選出されていました。
しかし、1913年以降は下院議員と同じく国民が上院議員を選ぶ直接選挙が行われています。
・下院
アメリカ各州に割り当てられる議員数は、10年に一度行われる国勢調査により確定された各州の人口に基づいて決定されます。
例えば、人口の少ないアラスカ州の下院議員の定数が1名なのに対し、人口の多いカリフォルニア州では50名を超える等、州によって大きな差があります。
上記から、上院より下院のほうが地域の利益代表的な側面が強くなりがちです。
★被選挙権の違い
・上院
上院議員の候補となるためには、30歳以上、9年以上米国市民であり、かつ選出される州において合法的住民であること が資格要件として必要とされています。
・下院
下院議員の候補となるためには、25歳以上で7年以上米国市民であり、選挙時に選出される州の合法的住民であること が資格要件として必要とされています。
これまで、上院議員のほうが、知名人や州単位の有力政治家が出馬することが多く、大統領選挙では、毎回のように現職の上院議員が出馬しています。
実際、ケネディ元大統領をはじめ、オバマ前大統領、ケリー前国務長官、クリントン元国務長官、バイデン前副大統領等、これまで上院は大物政治家を輩出しています。
★権限の違い
・上院の権限
条約の批准や各国駐在大使や裁判官等の指名人事について、大統領に「助言と同意」を与える権限は上院のみとされています。
また、上院議長は、その時の副大統領(現在はペンス副大統領が上院議長)が兼務することになっています。
・下院の権限
予算法案の先議権が認められています。しかし、日本の衆議院のような予算に関する下院の優越権はありません。
一方で、議会の最も重要な立法権は上院と同等の権限を保有しています。
下院だけの権限としては、大統領選挙で、選挙人を過半数獲得した候補者がいない場合は下院が大統領を選出する権限を持ちます。
また、下院議長は、副大統領に次いで大統領権限継承順位が第2位に位置づけられています。
つまり、アメリカ大統領の権限継承順位は、副大統領が必ず兼務する上院議長よりも下に位置づけられています。
上記から、上院のほうが全般的には権限が強いものの大統領選挙における権限については、下院のほうが強いといえます。
■まとめ
アメリカの上院と下院は、日本の衆議院と参議院と基本的には似た仕組みです。
ただ、参議院がとかく衆議院からみて格下にみられがちなのに対し、上院と下院にはバランスよく権限が分散されていることが特長です。
具体的には、上院が大統領に批准や各国駐在大使や裁判官等の指名人事について、大統領に「助言と同意」を与える権限を保有する一方、
下院にだけ、大統領選挙で、選挙人を過半数獲得した候補者がいない場合、大統領を選出する権限を保有するというように権限が片方の院にのみ集中しないようにしています。
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