イスラム教とは?簡単に説明,豚肉を食べない理由とは?

新聞やテレビで毎日のように目にするイスラム教という言葉。
でも、イスラム教がどんな宗教か正確に理解している人は多くはないでしょう。
イスラム教についてよくある疑問”豚肉を食べないのはなぜ”ということも含めて
わかりやすく説明します。


イスラム教とは?その成り立ちと特長

いきなり、イスラム教とは?と問いかけられると尻込みしがちではないでしょうか。

でも、イスラム教の創始者とされるムハンマド(572~632)が実は日本の歴史上で最も有名な人物の1人の聖徳太子(574~622)と同時代に生きていたということを知ると、グッと親近感が沸くのではないでしょうか。

イスラム教は、当時、中東のメッカという都市に住んでいた40歳のそれまでは、ごく普通のおじさん(大阪弁だとおっちゃん)のムハンマドが洞窟にこもっていた時に、起きたある出来事をきっかけに始まったのです。

ムハンマド(マホメット)に起きた出来事とは?

ムハンマドは6歳までに父母どちらも亡くなり、幼くして孤児となりました。

その後、ムハンマドは叔父に養育され、成人となり商売で成功を収めました。
25歳のときに聡明な女性とされた40歳の未亡人ハディージャと結婚。

ムハンマドは家庭を持ってから、しばしばメッカ近郊のヒラー山の洞穴にこもって瞑想にふけることを習慣にしていました。

ところが、610年、40歳の時に洞窟内でうとうととしていたムハンマドの前に突然、天使ガブリエルが現れ、最初の啓示を受けたのです。

この時、背中に大きな羽のようなモノを身につけたガブリエルがムハンマドを何度も押さえつけ、自分がつぶやくことを詠めと命じたということです。

ムハンマドは、字の読み書きが出来ませんでしたので、ガブリエルのいうことを必至に口で復唱し、暗記したと伝えられています。

イスラム教の聖典のコーランが信者によって声をだして詠まれるのは、この出来事が背景にあるとされています。

ちなみにこのガブリエルは、キリスト教でも神に仕える大天使と信じられています。

イスラム教の成立

ムハンマドは、これは悪霊にとりつかれたからだと思い、家に帰るとこの洞窟での異常な体験を恐怖に体を震わせながら妻のハディージャに語ったのです。

そうしたら、ハディージャは、”これまで多数の人々に善行をしてきたあなたに悪霊がとりつくわけがない”と励ましました。

また、たまたま近くにキリスト教徒がいて、”ムハンマドの前に現れたのはキリスト教で大天使とされるガブリエルに違いない”と諭されたことで、次第に預言者としての自覚を得るようになっていきました。

そして、妻ハディージャが初めての信者となったのをきっかけに、身内を中心に信者が広まって行きました。

その後、ムハンマドはイスラム教の共同体(ウンマ)の宗教指導者となり、当時多神教が主流だった周辺アラブ諸部族を次々にイスラム教化。

632年のムハンマドの死までには、アラビア半島のほぼ全域がイスラム教によって統一されました。

その後、さらに発展、現在では、イスラム教は、アラビアをはじめとした中東を中心に広がり、東はインドネシアから、西はアフリカの大西洋沿岸諸国にまで広く信者が存在しています。



多くの人にとって、イスラム教は色々制約が多く大変な宗教というイメージをもたれがちですが、その特長はどんなものなのか、わかりやすく説明します。

イスラム教の特長とは?

イスラム教のイスラムとは、「服従」、「神に対する絶対的な帰依」を意味します。
絶対的な帰依というだけあって、イスラム教の最大の特長は”信仰において曖昧さを許さない”ことにあります。

具体的にはイスラム教徒の第一の義務の「信仰告白」で”唯一神であるアラーと預言者ムハンマドの教えに従う”ことを表明することにもその厳しさが現れています。

「信仰告白」は、第一歩に過ぎず、断食・礼拝等、イスラム教徒として毎日しなければならないことが一挙に増えるのです。

この点で、心の中で信じるだけでも信者になることができるキリスト教徒と大違いです。
日本の歴史の中でキリスト教徒が迫害された時代に”隠れキリシタン”が存在したことは広く知られていますが、「信仰告白」が義務とされるイスラム教には”隠れイスラム教徒”のような存在はありえないのです。

このようにイスラム教の特長は、信者になると日常生活で絶えず神を意識して生活しなくてはならないことにあります。

イスラム教徒(ムスリム)というと昼間に祈祷するために床にひれ伏すというイメージがありますが、それ以外にも信者としてしなくてはいけないことがあるのです。
具体的にどんなことをしなければならないのかわかりやすく説明します。

イスラム教徒がしなければならない五行とは?

①信仰告白(シャハーダ)
信仰告白といっても、皆の前で”私はイスラム教を信じます”というのでは認められません。
必ず、”アッラーの他に神はなし。ムハンマドはアッラーの使徒なり”と唱えなければ信仰告白したことにならないのです。

②礼拝(サラート)
イスラム教徒の行為で最も広く知られているのが礼拝です。
サッカー等の国際的な試合時間に礼拝の時間が重ならないように要請するというようなことが時々話題になります。

イスラム教の特長として、アッラー(神)への服従と感謝の心は毎日、必ず形にしなければならないとされています。

初詣の時にだけ?信心深くなる?日本人のようなライフスタイルは認められないのです。
五行の一つの礼拝(サラート)は、その代表的な儀式。

イスラム教徒(ムスリム)は、外国にいようとどこに居ようと夜明け(日の出前)、正午、午後、日没、夜半の1日5回、必ず聖地メッカの方向に向けて、礼拝しなくてはなりません。

日本人のように忙しいから帰国したらお参りすれば良いというわけにはいかないのです。
最近、訪日するムスリムが増えたことで、空港内等に祈祷室を設けるところが増加しているのはこのためです。

③断食
イスラム教における断食は、無理なダイエットをするために1週間飲み食いしないというような断食とは全く異なります。

イスラム暦の9月にあたる月(ラマダーン月)の30日間、イスラム教徒は日の出から日没まで一切の飲食を断つことが義務となっています。

逆にいうと夜になるまで断食するのがイスラム教の断食です。

この間、水やお茶すら飲むことも出来ないという徹底ぶりです。
ただし、妊婦や病人は例外扱いになります。

なぜ、ラマダーン月に断食をするのかというとムハンマドが最初に啓示を受けた月だからです。

また、断食には、人間の最大の欲望である食欲に打ち勝つと同時に食べ物に恵まれない人への思いを新たにするという目的があるとされています。

でも、日没後は飲食は自由なので、かえって大食いになり、多くの信者が”夜に一気食い”するため、イスラム諸国の食料消費量は、ラマダーン月が年間で最高になるというのが通例となっています。

④喜捨(ザカート)
イスラム教徒はその財産に比例した喜捨、要するに寄付をしなければなりません。

喜捨には、財産ごとに税率が定められていて、通貨は2.5%,金が5%等となっています。

喜捨は、政府によって一種の税のような形式で徴収されますが、その使い道はコーランに定められていて、勝手に使い道は決めることはできません。

国家が徴収した税の使い道が、特定の宗教の教典によって制約されるなんてことは、日本人には理解しにくいことかもしれません。

⑤巡礼(ハッジ)
イスラム教徒は男女を問わず、生涯に一度は、サウジアラビアの聖地メッカのカアバ神殿に行って巡礼しなくてはならないとされています。

尚、巡礼の際の服装は質素であることが求められています。

服装を質素にというのは、イスラム教の前には身分も貧富も関係ないことを示すためといわれています。



イスラム教への理解を深めるためには、預言者ムハンマド、大天使ガブリエル、アッラーの関係性を正確に把握しておくことが必要です。

ムハンマドと神アッラーと大天使ガブリエルの関係

ムハンマドと神アッラーと大天使ガブリエルの関係は以下の通りです。

神:アッラー
 ↓
大天使:ガブリエル
 ↓
預言者:ムハンマド

つまり、アッラー(神)がムハンマドに使者として大天使ガブリエルを派遣して、アッラーの言葉を取り次いだということになります。

ここで押さえておきたいことは、神はアッラーだけということで、ガブリエルもムハンマドも神ではないということです。

ガブリエルは、神の使者で神ではないとされています。

ムハンマドを預言者(予言者ではありません)というのは、アッラーの言葉をガブリエルを介在して伝えられたとされるからです。

同じ唯一神を信奉するキリスト教では、元々ユダヤ人だったイエスが死去後、昇天した後に神とされました。

対してイスラム教では、ムハンマドについては、一貫して神の言葉を託された人間であって神とは位置づけられていないことが特長的です。

イスラム教のコーランは、キリスト教における聖書に等しい存在ですが、どんな内容なのか知っている人は少ないと思います。

そこでコーランとはどんなものなのか簡単に説明します。

イスラム教の聖典コーランとはどんなもの?

①そもそもコーランとは
コーランは神であるアッラーが大天使ガブリエルを通じて、自らの言葉を、ムハンマドに”読め”といったことに由来しています。

そもそもコーランとは”アル・クルアーン”つまり”読誦されるもの”という意味があります。

イスラム教徒がその教会であるモスクに集まり、コーランを声を出して読むのはこのためです。

コーランは、全てアラビア語で書かれています。
これは、アッラーがムハンマドにアラビア語で語りかけてきたからと伝えられています。
他の言語に訳されたものはコーランとは看做されないとされています。

②コーランの内容・構成
コーランは全部で114章から構成されています。
その章には、内容を反映して”開扉”、”人々”等の名称がつけられています。

1章あたりのボリュームには、ばらつきがあり、一番長い牝牛章で287節、一番短いカウサル章は、3節となっています。

③コーランは預言の集大成
アッラーからガブリエルを通じて下された啓示は、ムハンマドが自らを預言者として自覚してから死ぬまで23年間、小刻みに続いたとされています。

ムハンマドは、啓示がくだされるたびにそれを記憶し、人々に伝えていったとされます。その伝えた啓示の集大成がコーランなのです。

④聖書との共通性
イスラム教はその成り立ちから、同じ1神教であるユダヤ教、キリスト教と深い関係があります。

そのため、コーランにもユダヤ教の聖典である旧約聖書に登場するノアの箱舟で有名なノア、モーセの十戒で知られるモーセ。

そしてイエス・キリストも預言者として記載されています。

つまり、イスラム教の立場からするとユダヤ教とキリスト教は否定するべき存在ではなく、両宗教の最終版・集大成がイスラム教であるというスタンスになります。

※ユダヤ教側とキリスト教側は、イスラム教が両宗教の集大成であるとの解釈は認めていません。


イスラム教徒(ムスリム)が豚肉を食べない理由とは?

結論からですが、イスラム教徒が豚肉を食べない理由は、教典のコーランの6章145節で
”食べたいものは何でも食べることが出来る。ただし死獣の肉、流れ出る血、豚肉-それは不浄である-、アッラー以外の名が唱えられたものはこの限りではない”と定められているからです。

ですので、イスラム教徒は、”なぜ豚肉を食べていけないのか”などと疑問を感じるまでもありません。”コーランで禁じているから”で十分。

信者には、”豚肉を食べない根拠や理由”は必要ないのです。

そもそもムスリムが豚肉を食べない理由とは?と疑問に感じるのは、イスラム教非信者だけといえるでしょう。

とはいっても、牛肉はOKで豚肉がダメとなった背景には以下のようなことがあるのではないかと推測されています。

①豚肉は傷みやすいので中東のような気温が高い地域ではそもそも食に適さないこと
②豚は、牛などに比べて不潔な動物と認識されていること
③イスラム教が大きな影響を受けているユダヤ教の教典の旧約聖書で”豚肉を食べてはいけない”としていること

筆者にはパキスタン人と日本人の間に生まれたイスラム教徒の知り合いがいましたが、”酒はたまに掟破りすることはあるが、豚肉は絶対食べない”と真顔で語っていました。

実際、昨年、東京都内の入国管理所に収容されていたイスラム教徒のパキスタン人に誤って、豚肉が材料のベーコンを提供され、それを食べてしまったということがありました。
当のパキスタン人は人格を否定されたのに等しいと激怒、抗議のため、ハンストを敢行しました。

このようにイスラム教徒にとって豚肉食は、トンカツやトン汁、豚まんを好んで食する日本人には考えも及ばないほどデリケートな事柄であることは間違いありません。

とにかくイスラム教徒には豚肉はご法度と認識しておくだけで十分で、信者に”ダメな理由”は尋ねないほうが良いと思います。


イスラム教が偶像崇拝を厳しく禁じる背景

イスラム教では、偶像を崇拝することを厳しく禁じています。
そのため、高校の世界史の教科書からどのイスラム教関係の本に至るまでムハンマドの顔は描かれていません。

これは、ムハンマドの顔を描くことでそれが崇拝対象となるのを避けるためです。

イスラム教が偶像崇拝を厳しく禁じるのは、ムハンマドを含め人間その他のものは、全て神(アッラー)が創造したものとされているからです。

イスラム教では、崇拝するべき対象は神(アッラー)だけ。

従って、神に創造されたモノを崇拝の対象にするのはもってのほか、ナンセンスというスタンスです。

私も、これまでイスラム教関係の本を何冊も読みましたが、ムハンマドらしき人物が
描かれていても顔だけは、真っ白とされています。

イスラム教の創始者がどんな顔をしているのかについては、実際、信者も知りたいと思っているのではないかと思いますが、永遠に知ることは出来ないようです。

イスラム教徒は、世界的に増加傾向にありますが、現状の信者数、信者の多い国は以下の通りです。

全世界のイスラム教徒の信者数と信者の多い国

①全世界のイスラム教徒の信者数
全世界のイスラム教徒の信者数は約18億人でキリスト教の24億人に次いで世界で2番目に多くなっています。

いずれ、イスラム教徒の信者数が世界一になるとの予測も出ています。

②信者の多い国
インドネシア、パキスタン、インド、トルコ、イラン、バンクラデッシュ
エジプト、ナイジェリア

現時点で世界で最もイスラム教徒の信者数が多いのはインドネシアとなっています。

イスラム教というと中東というイメージが強いので東南アジアのインドネシアというのが意外な感じがしますが、昔から中東との貿易が盛んだったことで、貿易を通じて、信者が増えていったようです。



時々イスラム関係のニュースでシーア派やスンニ派という言葉を目にすることがあると思います。

これは、イスラム教の宗派で、その対立の背景は部外者には理解しにくい面がありますので簡単に説明します。

シーア派とスンニ派の違いとは?

①分裂のきっかけとは?
イスラム教のシーア派とスンニ派は、創始者ムハンマドが632年に亡くなった後、その後継者をめぐって対立が起きたことで分裂。シーア派とスンニ派が誕生しました。

②具体的な対立点
シーア派がムハンマドの後継者は、娘婿のアリーにすべきだと主張したのに対し、スンニ派は、アブー・バクルが後継者であると主張、物別れに終わり、対立が決定的になりました。

③現在の状況
両派の対立が何百年も続いていることで、教義やイスラム法、儀礼にまで大きな違いが生じてきています。

また、イスラム教の有力国のサウジアラビアとイランの対立の背景としては、サウジがスンニ派、イランがシーア派であることが根底にあります。

④信者数の違い
スンニ派がイスラム教徒の約90%、シーア派が約9%となっています。

まとめ

イスラム教とは?についてまとめると以下のようになります。
①イスラム教は、610年、アラビア半島のメッカの商人ムハンマドに神から啓示が下されたことがきっかけで誕生”唯一神のアッラー”を信仰の対象としています。

②イスラム教徒は義務として、信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼の5行をしなければなりません。

③イスラム教の聖典コーランは、ムハンマドが預言者として自覚してから死ぬまで23年間、神から下された言葉の集大成で、アラビア語で書かれています。

④イスラム教徒が豚肉を食べてはいけないとされる理由は、単にコーランで神が命じているからです。
ただ、”豚肉は傷みやすいので中東のような気温が高い地域ではそもそも食に適さないこと”、”豚が牛に比べて不潔な動物と考えられていること”等が影響しているのではないかといわれています。

日本では聖徳太子の時代に、はるか彼方の中東アラビアの40歳のおじさんに起こった出来事が現在に至るまでとんでもない広がりが続いていることに改めて驚かされます。


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