台湾と中国の関係とは?歴史から侵攻の可能性までウクライナとの比較でわかりやすく説明

日本がまだ台湾(中華民国)と国交があり、その後,現在の中国(中華人民共和国)と国交を結んだことで台湾と断交
したことをリアルタイムで見聞きした筆者が台湾と中国の関係を過去の歴史から侵攻の可能性について、ロシアによるウクライナ侵略と比較しつつ、わかりやすく説明します。



中華人民共和国と台湾(中華民国)の関係とは

現在の台湾と中国の関係の状況を作りだしたのは、直接的には、第二次世界大戦後に勃発した中国国内における蒋介石率いる国民党(終戦時点に中国を
支配)と毛沢東率いる中国共産党との内戦で、中国共産党側が勝利。

1949年に中華人民共和国が成立したのに対して、国民党が台湾側に逃れ、中華民国として”自分たちこそ中国の正統な政府・国家である”
と主張し続けていることが現在の中国と台湾の関係の起点になっています。

中国の略史

1911年 辛亥革命がおこる
1912年 中華民国成立、清朝崩壊
1921年 中国共産党創立
1949年10月1日 中華人民共和国成立

実際、1972年に日本と中華人民共和国が国交を結ぶまでは、日本は中華民国(現台湾)と国交を結んでおり、逆に現在の中国は中共(中国共産党の略称)とよんで正式な国家として認めて
いませんでした。

日本だけでなく、1970年代ごろまでは、世界でも中華民国(現台湾)と国交を持つ国の方が圧倒的に多数でした。

アメリカは1979年に中国と国交を結び、台湾と断交しました。

現在の国連で中国(中華人民共和国)は常任理事国となっていますが、国連が開設された時点では、終戦時に中国の正統な政府と認定されていた中華民国(現台湾)が常任理事国でした。
その後、その地位を現在の中国(中華人民共和国)が引き継ぎ、現在に至っています。

ちなみにアメリカは戦後は中華民国(現台湾)をアジアにおける最も重要なパートナーとする構想でしたが、中華人民共和国となってしまったために、敗戦国扱いにしていた日本を代わりにパートナーとせざるをええなくなり、現在に至っています。

こうした歴史的経緯から、中国(中華人民共和国)は自分たちの政府が唯一の正統な国家・政府であり、台湾は国家でなく中国(中華人民共和国)の一部に過ぎないと主張し続けています。

だからこそ、中国(中華人民共和国)は、オリンピックでの台湾の表記をチャイニーズタイペイとさせることにこだわっているのです。

一方の台湾は、中国のこのようなスタンスに反発。

台湾は、中国(中華人民共和国)はとは別の国家であると主張しています。

しかし、中国は”台湾の独立は絶対認めない”というスタンスで、もし独立しようとするなら戦争とまでいう指導者がいる等、一貫して強硬です。

中国は台湾に対して、香港のような1国2制度のような関係を提案したことがありますが、香港の民主化が弾圧され、事実上中国本土と一体化されたことで台湾側は検討すらしなくなりました。



中国と台湾の現状

中国

政治体制
中国共産党による一党独裁

国家主席
習近平

面積
約960万平方キロメートル(日本の約26倍)

人口
約14億人

首都
北京

民族
漢民族(総人口の約92%)及び55の少数民族

公用語
中国語

宗教
仏教・イスラム教・キリスト教など

台湾

政治体制
三民主義(民族独立、民権伸長、民生安定)に基づく民主共和制。五権分立(行政、立法、監察、司法、考試)

総統
蔡英文(副総統:頼清徳)

面積
3万6千平方キロメートル(九州よりやや小さい)

人口
約2,360万人(2020年2月)

主要都市
台北、台中、高雄

言語
中国語、台湾語、客家語等

宗教
仏教、道教、キリスト教

上記のように中国と台湾では、人口・面積ともに圧倒的な差がありますので、日本を含む国連加盟国の大半が中国を承認しているのは無理もないことです。



日本を含む国々は、なぜ中華人民共和国と台湾(中華民国)の2国と同時に国交を維持することができないのか

1972年に日本は中国(中華人民共和国)と国交を結んだと同時に台湾と断交しました。

なぜなら、中国(中華人民共和国)側が日本に国交を結ぶ条件として台湾との断交を必須条件としたからです。

この時、日本国内には親台湾派の政治家が自民党を中心に多くいて、台湾と断交することに大きな反発がありました。

また、反共という観点から中国(中華人民共和国)を中国唯一の政府と認めることにも抵抗を示す有力な政治家も少なからず存在していました。

当時の自由民主党では田中角栄首相が率いる田中派、大平外相が率いる大平派が親中国派。

安倍元首相の安倍派の源流の福田派が親台湾派という位置づけをされており、実際に田中首相・大平外相のコンビが日中国交回復を果たしました。

安倍元首相が現在も台湾と親密であるのは、福田派直系だからです。

現在の岸田首相と林外務大臣が所属する岸田派は、親中国派の大平派直系ということもあり、中国に甘いのではないかと警戒されています。

中国(中華人民共和国)からすると台湾は国家でなく、国内の一地方なのですから、国交自体を認めないのは当然ともいえます。

日本だけでなく、中国(中華人民共和国)と国交を結んだ国はほぼ同時に台湾と断交しました。

現在の日本と中国の関係は基本的に1972年の日中共同声明に依っています。
声明の三で”台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部”と明記されています。

日中共同声明全文


日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。


日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。


中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。
日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。


日本国政府及び中華人民共和国政府は、千九百七十二年九月二十九日から外交関係を樹立することを決定した。

両政府は、国際法及び国際慣行に従い、それぞれの首都における他方の大使館の設置及びその任務遂行のために必要なすべての措置をとり、
また、できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。


中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。


日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
 両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。


日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。
両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。


日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結を目的として、交渉を行うことに合意した。


日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の関係を一層発展させ、人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、既存の民間取決めをも考慮しつつ、貿易、海運、航空、漁業等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行うことに合意した。

千九百七十二年九月二十九日に北京で

 日本国内閣総理大臣  田中角栄(署名)
 日本国外務大臣  大平正芳(署名)
 中華人民共和国国務院総理  周恩来(署名)
 中華人民共和国 外交部長  姫鵬飛(署名)

共産主義国家ということで、当初は、中華人民共和国を中国の唯一の国家・政府と認めることには抵抗のある国も多数ありましたが、中国全土と国民の大半を現実に統治している
という状況から、徐々に中華人民共和国と国交を結ぶ国が増えていきました。

1970年ごろまでは、台湾(中華民国)と国交を結んでいた国の方が多かったのですが、現在、台湾と国交がある国は、以下の通りです。
台湾と国交がある国=中国とは国交がない国ということになります。

台湾と国交がある国

大洋州(4か国)
ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、ナウル共和国

欧州(1か国)
バチカン

中南米・カリブ(9か国)
グアテマラ、パラグアイ、ホンジュラス、ハイチ、ベリーズ、セントビンセント、セントクリストファー・ネーヴィス、ニカラグア、セントルシア

アフリカ(1か国)
エスワティニ

日本は台湾と断交しましたが、公益財団法人日本台湾交流協会等を通じて、国交のある国と同レベルの非政府間の実務関係として維持されています。
実際、国交がある韓国よりも良好な関係が続いています。



中国・台湾をめぐる主な動き

1895年
日清戦争で勝利した日本が清から台湾を割譲

1945年
日本敗戦により台湾統治終了

1949年
中国共産党と国民党との国共内戦で共産党が勝利。
中華人民共和国が成立

国民党が台湾に敗走。

1971年
中国が国連に復帰

台湾が国連を脱退

1972年
日本と中国が国交回復

台湾と断交

中国が台湾に侵攻する可能性について

中国(中華人民共和国)は、建国後の国内が落ち着けばいずれは台湾を武力統一するつもりだったとされています。

ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発。
アメリカの参戦により窮地に陥った北朝鮮を助けるために中国人民義勇軍として参戦。

建国されたばかりの中国は、約3年にわたり朝鮮戦争においてアメリカ・韓国を中心とする国連軍と戦争したことで、軍事的・人的に多大な損害を受けました。

また、朝鮮戦争を契機にアメリカが中国・台湾・日本・朝鮮半島への関与を強めたことで、台湾もアメリカが防衛すべき対象に指定されました。

中国自体も建国後の混乱、毛沢東主席が引き起こしたまた文化大革命によって何年にもわたり、国内が大混乱と台湾統一どころではない状況が続きました。

そのため、台湾を武力統一することが先送りとなり、現在に至っています。

しかし、現在の習近平主席が中国の指導者となってから、台湾をめぐる環境は激変しました。

それは、習主席が台湾統一を自身の政治目標としてはっきりと掲げたためです。

実際、2020年以降、それまで欧米なみの自由が認められていた香港への圧力を強め、民主化運動が一掃され完全に中国共産党の支配下にされてしまいました。

習近平主席は、ことあるごとに”偉大な中華民族の復興”を国内外に政治的にアピールしています。

”偉大な中華民族の復興”とは要するに”中国の国力が弱かった時に結ばれた条約や国境”については効力は認めないというスタンスです。

この中には台湾統一が最重要事項となっていることは間違いありません。

習主席は、これまでの慣例を破り3期目は確実ですくなくともあと5年はその任に就くと思われますので、自分の在任中に中華民族の悲願である
台湾統一に乗り出してくる可能性は高いと思います。




現在の中国と台湾の軍事力は以下の通りです。

中国の軍事力

(1)国防予算
約1兆3,553億元(約20兆3,301億円:1元=15円換算)(第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議にて発表)

(2)兵力
総兵力推定約204万人
(陸軍約96.5万人、海軍約26万人、空軍約39.5万人、ロケット軍(戦略ミサイル部隊)約12万人、戦略支援部隊約14.5万人、その他約15万人)(英国際戦略研究所『ミリタリーバランス2021』等より)

台湾の軍事力

軍事力(「ミリタリーバランス 2018」等による)
(1)予算 3,318億台湾ドル(107.6億米ドル)
(2)総員 約21.5万人(予備役 165.7万人)

陸軍 13.0万人(主力戦車565両、軽戦車625両)
海軍 4万人(海兵隊1万人を含む)駆逐艦・フリゲート艦20隻、潜水艦4隻
空軍 4.5万人、作戦機約481機(主力戦闘機、F-16A/B、F-5E/F)

上記のように中国と台湾の軍事力には大きな差がありますが、台湾には予備役が165万人で戦争となれば、さらに民兵が加わりますので
200万人ほどの兵力が展開可能だとみられています。

いかに中国の軍事力が強力でも台湾に上陸して戦闘となると相当の犠牲がでる可能性が高いです。

さらに台湾有事となれば、アメリカや日本が介入する可能性が高いですので、そこまでのリスクを冒してまで中国が侵攻するのか
という観点から、今すぐということはないだろうという見方が有力です。

台湾は中国による武力統一の動きを警戒して実践的な軍事演習を頻繁に行っています。

ウクライナと台湾の違い

ウクライナはロシアに侵略されましたが、アメリカもNATOも武器供与というかたちでウクライナに援助はしていますが、直接、軍を投入することはしていません。
これは、現時点ではウクライナはNATO加盟国ではないため、米国の防衛対象にもなっていないからです。

だからこそ、プーチン・ロシアに侵略されたともいえます。

しかし、台湾は米国が防衛ラインに位置づけていますので、有事となれば米軍の介入の可能性が高いです。

もし、中国が台湾武力統一を目的とした侵攻した場合、ウクライナ戦争どころではない展開になることが濃厚ですし、日本も無関係では済まされません。

ただ、ロシアとウクライナは別々に国連に加盟している主権国家なのに対し、台湾は中国の一部というのは、国際的な共通認識です。

ですので、台湾武力統一は、他国への侵略ではなく内戦だという理屈がなりたちますので、他国への侵略よりはハードルは低いことが周辺国の懸念材料です。

まとめ

①戦後しばらくは、中国本土は国民党政府による中華民国(現台湾)として統治、国連常任理事国でしたが、中国共産党との国共内戦で敗北。
その後、中国共産党による中華人民共和国が樹立されたため、国民党政府が台湾に逃亡。
以来、中国本土を支配する中華人民共和国と台湾との対立が続いています。

②中華人民共和国は、いずれは台湾の武力統一を目指す予定でしたが、朝鮮戦争に参戦し、大きな犠牲を払ったこと、また、台湾をアメリカが
防衛対象としたため、現在に至るまで”両国間は平和とは言い難いですが戦争にまではならない”状況が続いています。

③台湾と中国の関係について、アメリカや日本を含む国連加盟国の大半は、中華人民共和国政府による、”台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である”という主張を承認したうえで国交を結んでいます。

④中国と台湾と同時に国交は結べないため、現在、台湾と国交がある国は15国となっています。

⑤台湾が独立の動きに出たら、中国は侵攻する可能性が高いです。ただ、台湾の軍事力も強力なうえ、米軍の介入の可能性が高いですので、いま直ぐに侵攻するということはないだろうと
いう見方が有力です。




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