囲碁プロ棋士の年収はいくらくらい?について、囲碁有段一歩手前、将棋三段の筆者が将棋との比較を踏まえ、わかりやすく説明します。
囲碁プロ棋士が得ている報酬とは?
まず、囲碁プロ棋士がどのような報酬を得ているかについてですが、①タイトル戦の賞金②対局料③基本給の主に3つの報酬が年収の大部分を占めています。
これら以外には、囲碁教室や囲碁サロン等におけるレッスン料。棋書等の著作権に関わる報酬があります。
将棋との比較では、レッスン料を得ている棋士は囲碁のほうが多いです。
それは、囲碁のほうが愛好者向けのサロンが多いからです。
そして、そのような囲碁サロンは参加料金が比較的、高額となっており、棋士のレッスン料に反映しているからです。
私は囲碁サロンに何度か行ったことがありますが、そこでの話では、プロ棋士でもトップクラスでないとレッスン料等で収入を得ないと厳しいと耳にしたことがあります。
囲碁プロ棋士のトップクラスはどれくらいの収入を得ているのか?
囲碁プロ棋士の年収はいくらくらい?という疑問に最も参考になるのは、トップクラスの棋士が実際、どれくらい稼いでいるのかという情報です。
そこで参考になるのが賞金ランキングです。
全ての囲碁プロ棋士が加盟する日本棋院は、毎年、賞金ランキングを公表しています。
2020年2月に公表された、賞金ランキングは以下の通りです。
★日本棋院 賞金ランキング(2019年分)
1.井山裕太三冠 1億825万円
2.芝野虎丸二冠 6766万円
3.一力 遼八段 3684万円
4.張 栩 九段 3227万円
5.藤沢里菜女流名人 2659万円
6.山下敬吾九段 2617万円
7.河野 臨九段 2523万円
8.羽根直樹碁聖 2100万円
9.上野愛咲美女流本因坊 2077万円
10.許 家元八段 1904万円
※平成31年1月1日~令和元年12月31日に行われた海外を含む全棋戦が対象、対局料を含む
ランキング上位の井山裕太三冠は、賞金金額が高額な囲碁タイトルを3つ。芝野虎丸二冠も2つタイトルを保持していましたので、3位以下を大きく引き離しています。
3位以下の棋士にしてもタイトル戦に挑戦者として登場していますので、囲碁プロ棋士の年収が多くなるかどうかはタイトル戦次第という側面が大きいです。
これに関しては、将棋も同じです。
話題の天才高校生プロ棋士の藤井聡太2冠は、2019年時点で約2000万の賞金を得て、ベスト10入りしています。
ただ、囲碁の特長は、女性棋士がトップ10入りしていることです。
これは、将棋界では、女流棋士はいても女性棋士がいないこと、女流棋士はトップクラスの2人しか、賞金額の大きいタイトル戦に参加できないからです。
現在、囲碁タイトルは7つあり、その賞金額は以下のようになっています。
囲碁タイトル戦の賞金額一覧
・棋聖戦 優勝賞金 4500万円
・名人戦 優勝賞金 3000万円
・本因坊戦 優勝賞金 2800万円
・王座戦 優勝賞金 1400万円
・天元戦 優勝賞金 1300万円
・碁聖戦 優勝賞金 800万円
・十段戦 優勝賞金 700万円
タイトル保持している棋士の年収に相当する賞金が多くなるのは、タイトルを決定する七番勝負あるいは5番勝負に登場するためには、予選やトーナメント、リーグ戦で勝ち進んでいく必要があるからです。
勝ち進んでいけば、必然的に対局数も増加していきますので、対局料も増えていくことになりますので、高額な賞金だけではなく、対局料も相当な額になります。
実際、賞金ランキング7位の河野 臨九段は、タイトルは保持していませんが第74期本因坊戦挑戦者になったことで対局料が多く、ランキング入りしたものと思われます。
全体としての囲碁プロ棋士の年収はどれくらいか?
囲碁プロ棋士の年収の大半を占めるタイトル戦の賞金や対局料は、どれだけ勝ち進んでいけるかに大きく左右されます。
タイトル戦ごとの組み合わせ等の運・不運にも左右されやすいので、同じ年収といっても会社員のように毎年少しずつ昇給していくというより、ある年は多く、次の年は激減ということも珍しくありません。
囲碁界では、さらに前年度の賞金ランキングに基づいて、昇段や会社員等の月給に相当する”月額の基本給”が決定されますので、タイトル戦で好成績を出せるかどうかに収入が大きく左右される賃金構造になっています。
対して将棋界の基本給は、名人戦の予選リーグでもある順位戦のA級、B1級、B2級、C1級、C2級のどのクラスに所属するのかによって決定されます。
トップのA級で月約80万。C2級で約20万と推定され、将棋プロ棋士の平均年収は400万前後と看做されています。
現在、囲碁プロ棋士は女性も含め約400人。対して、将棋界は160人前後となっています。
囲碁界と将棋界でタイトル数も賞金額もほぼ同じということを考え合わせると
全体としての囲碁プロ棋士の平均年収は、300万~400万と推定されます。
ただ、自発的に引退しない限り現役を続けることのできる囲碁プロ棋士のほうが、成績次第で引退となる将棋プロ棋士より恵まれている面もあります。
ですので、一概に将棋プロ棋士のほうが囲碁プロ棋士よりも経済的に恵まれているとは一概に言えません。
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