将棋の上座と下座とは?羽生連続上座事件を事例にアマ三段の強豪?がわかりやすく

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将棋の上座と下座とは?要するにどういう基準で上座・下座に座る棋士が決まるのか?について、現在のルールや過去に棋界を騒がせた羽生善治3連続上座事件を事例にアマ三段の強豪?がわかりやすく説明します。



将棋の上座と下座とは?なぜ必要なのか?

上座と下座がなぜ必要なのか?

結論からですが、将棋では全ての棋士について序列が定められているからです。

つまり、一般生活では、”地位の上、年齢が上の人が上座”というしきたりが将棋界では”序列の上の棋士が上座”とすることで序列上位者に敬意を払う必要があるからです。

序列は、タイトル保持数、段位、棋士番号を勘案して定められますが、全く同じ序列ということがないため、序列の上下で上座(序列上位者)・下座(序列下位者)を決めることになるのです。

上座と下座の位置とは?

将棋の対局はほとんどは、東京将棋会館もしくは関西将棋会館で行われています。

東京でも関西でも対局室に入って入り口からみて奥にある方が上座。手前にある方が下座になります。

対局場所がタイトル戦の7番勝負等でホテルで対局する場合も、基本的に同じです。

上座の特権とは?

上座に座った棋士(=上位者)は、単に上座に座るだけではありません。

上位者は、対局前に駒箱を開け、玉(ぎょく)と王のうちの必ず王の駒を取ります。
当然ですが、下位者が”この対局は、王で指したい”と言うことは出来ません。

また、記録係は対局前に上位者の歩を5枚とって宙に投げ振り駒をすることがならわしになっています。

つまり、上座に座った棋士がその対局の開始に関わる一連の流れを主導することになるのです。



将棋の上座と下座は、どのような基準で決めるのか?

★上座と下座の決定に重要なタイトルの序列
将棋の上座と下座を決定する基準として、重要なのがタイトルの序列です。

タイトルの序列は賞金額によって決まり、現在は竜王を序列トップに下記のようになっています。
竜王

名人

叡王

王位

王座

棋王

王将

棋聖

★竜王、名人位の棋士
竜王、名人位の棋士は原則として上座になります。
竜王対名人の場合は、タイトルの序列が上の竜王が上座になります。

※名人、竜王のタイトル保持者が異なる場合は、タイトル保持数が多い棋士が上位。同じ保持数の場合は棋士番号が小さい棋士が上位

★竜王、名人位以外のタイトル保持者
タイトル保持数が多い棋士が上位となり、上座になります。
ex:3冠対2冠であれば、3冠が上座。

タイトル数が同じであれば、序列の高いタイトルを保持している棋士が上座になります。
ex:叡王・王位>王座・棋聖

★永世・名誉称号襲位者
将棋のタイトルでは、通算5期獲得、連続5期獲得等、各棋戦の規定により、永世名人、永世王将、永世竜王、名誉王座等の称号が授与されますが、いずれも引退後に名乗ることになっていますので永世名人と永世竜王がどちらが序列が上かという捉え方はしません。
ただし永世名人同士の対局であれば、早く永世名人を授与された棋士が上座になります。

★段位による基準
原則として、両対局者が同じ段位の場合は、先にその段位になった棋士が上座になります。

このように将棋界では、上座と下座について細かく規定していますが、過去に上座と下座を巡り”羽生善治3連続上座事件”という大きなトラブルがありました。



羽生善治連続上座事件とは?

羽生善治連続上座事件とは、羽生善治九段が23歳にして4冠となっていたときの出来事です。
事件が起きた当時は、現在と異なり”順位戦における順位上位の棋士が上座になる”というのがしきたりとなっていました。

羽生4冠がA級順位戦に初参加、成績は好調で、名人挑戦権をかけて残り2局となっていました。

残り2局の相手は中原誠前名人と谷川浩司王将。

A級順位戦での序列は、リーグ初参加の羽生4冠が9位。谷川王将は4位、中原前名人は1位で永世名人有資格者。

その中原前名人との対局日に羽生4冠が先に現れ、上座に着席したのです。後から現れた中原前名人は対局室に入ると目を丸くしたということです。

なぜ目を丸くしたかというと、羽生4冠よりも、順位戦で上位にあり、永世名人でもある中原前名人の方が上座であることが誰の目からみても明白だったからです。

このとき、中原前名人は羽生4冠に何も言わず下座に座って対局しました。

羽生4冠は、最終局の谷川王将戦でも自分より順位が上の谷川王将に対して上座に座りました。

この時、谷川王将は、怒りを顕わにしたと伝えられています。

中原・谷川両棋士の表情から、こちらが考えている以上に棋士が上座・下座に拘りを持っていることが窺えます。

ちなみにこの2局、いずれも上座に座った羽生4冠の勝利に終わりました。

この羽生4冠の振る舞いは、当時の将棋界で”非礼だ”として非難されました。

羽生4冠がなぜこのような非礼をしたのかというと”自分は4冠ということで、全ての対局者に対して自分が上座だと思い込んでいて、順位戦だけ特別な決まりがあることは知らなかった。”からと釈明しています。

この羽生善治連続上座事件は、後に羽生4冠が将棋雑誌に謝罪文を掲載することで決着しました。

部外者からすると中原前名人も谷川王将もなぜ羽生4冠に直接注意しなかったのかという点で不可解に感じます。

もしかしたら、これから始まる対局を前に余計なエネルギーを使いたくなかったからかもしれません。



現在の将棋界の上座と下座の運用

高校生棋士である藤井聡太2冠の登場により上座と下座に対する関心が高まっています。

これまで説明させていただきましたように将棋界では、”上座と下座について細かく規定”棋士も従っています。

そうはいっても、例えば羽生九段との対局で現在の序列では上である永瀬2冠が上座に座るのは気が引けるのか、早めに対局室に現れ、下座に座り、羽生九段の入室を待つというように、実際の運用では、やはり”自分が大先輩に対して上座に座ること”に対して、抵抗があるようです。

この羽生・永瀬ケースでは、後から対局室に現れた羽生九段が永瀬2冠に対して、”本当に良いから上座に座ってくれ”と促したということです。

羽生善治3連続上座事件の当事者である羽生九段も今では、上座を譲る立場になっていることに時の流れを感じます。

話題の藤井聡太2冠と羽生九段との対局では、現在は無冠の羽生九段が下座となっていました。このときは、羽生九段が先に対局室に現れ、下座に座っていました。

藤井聡太2冠に対し上座に座れる棋士は誰?

藤井聡太2冠に対し上座に座れる棋士はかなり絞られます。

具体的には少なくともタイトル保持者でない限り、上座に座ることはできません。

しかも、藤井聡太八段は棋聖と王位の2つのタイトルを保持していますので
①タイトルを棋聖と王位より序列が高いタイトルを含めタイトルを2つ以上保持

②名人もしくは竜王のタイトルを保持

①、②のいずれかに該当する棋士しか対し上座に座ることはできません。

現時点では、豊島竜王と渡辺名人のみとなります。

まとめ

①将棋の上座と下座は、タイトル保持や段位等の基準で自分より序列が上位の棋士に敬意を払うために存在します。

②上座に座った棋士は、対局前に駒箱を開け、玉(ぎょく)と王のうちの必ず王の駒を取ります。また、記録係は上座の棋士側の歩を5枚とって宙に投げ振り駒をすることがならわしになっています。

③将棋の上座と下座は、タイトル保持数、タイトルの序列、段位、現在の段位に就いた月日や棋士番号等を考慮して決められます。



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