恩赦とは?過去の事例を交えてわかりやすく説明

新天皇を迎え平成から令和となり、政府が恩赦を2019年10月に行われる「即位礼正殿の儀」に合わせ実施する方向ということが報じられています。

余り馴染みのない恩赦について、過去の恩赦の事例を交えてわかりやすく説明します。



■恩赦とは?

恩赦は、行政権を行使して、その時点で裁判で確定した刑罰の内容を軽くしたり、消滅させたりする制度のことです。

世界的には君主による恩恵として国家の慶弔時に実施されることが通例でした。
現在でも国王がある国を中心に日本以外でも恩赦制度は存在しています。

日本では、旧憲法の下では、恩赦は天皇の決定事項とされていました。

しかし、現行憲法では、内閣の助言と承認により天皇が認証するという形式になっており、恩赦を実施するかどうかは、事実上行政権(内閣・政府)の決定事項となっています。
恩赦を具体的にどのような手続で施行するかについては、恩赦法の規定に従うこととされています。




今回、恩赦は、新天皇即位という皇族に関連したものですが、過去の事例では、憲法の公布、条約の発効等、別の事由で恩赦が行われたケースもあります。

具体的には以下の通りです。

■日本における過去の恩赦の事例

★第二次大戦終局(理由)1945年10月(時期)

政令恩赦 約42万人 特別基準恩赦 629人

★日本国憲法交付(理由)1946年11月(時期)

政令恩赦 約16万人 特別基準恩赦 1620人

★上記恩赦の修正(理由) 1947年11月(時期)

4750人

★サンフランシスコ平和条約発効(理由) 1952年4月(時期)

政令恩赦 約100万人 特別基準恩赦 2136人

★皇太子立太子礼(理由)  1952年11月(時期)

特別基準恩赦 3478人

★国連加盟(理由)  1956年12月(時期)

政令恩赦 約7万人 特別基準恩赦 2155人

★皇太子結婚(理由) 1959年4月(時期)

政令恩赦 約4万人 特別基準恩赦 2941人

★明治100年記念(理由) 1968年11月(時期)

政令恩赦 約14万人 特別基準恩赦 4086人

★沖縄復帰(理由) 1972年5月(時期)

政令恩赦 約3万人 特別基準恩赦 2174人

★昭和天皇大喪(理由) 1989年2月(時期)

政令恩赦 約1016万人 特別基準恩赦 789人

★天皇即位(理由) 1990年11月(時期)

政令恩赦 約250万人 特別基準恩赦 398人

★現天皇結婚(理由) 1993年6月(時期)

特別基準恩赦 1277人

※政令恩赦
対象となる罪や刑の種類を政令で決めて一律に実施する恩赦
具体的には一定の刑期を終えた受刑者の残りの刑の執行免除や公民権の回復等が行われます。

死刑を減刑する恩赦は1952年11月を最後に行われていません。

※特別基準恩赦
政令恩赦から漏れた人に配慮して、内閣が定めた基準に沿って審査する恩赦

上記のように恩赦は、皇族の慶弔だけが理由で行われているわけではありません。
沖縄復帰や条約の発効などの国家的な出来事を理由とした恩赦も行われます。

過去最大の恩赦は、昭和天皇大喪を理由としたもので1000万を超える人が対象となりました。

また、恩赦は1950年代には頻繁に行われていましたが、1960年代以降は少なくなっており、2000年代には一度も行われていません。

平成時代にには、いずれも皇族の慶弔を理由とした恩赦が3回、実施されました。




恩赦には、その必要性を巡り、国民から根強い批判もあります。

■恩赦が批判される背景

そもそも恩赦は、司法権(裁判所)の元で決定された刑罰を行政権(内閣・政府)の横槍で変更・修正を加えるような行為といえ、現行憲法の根幹ともいえる三権分立の観点からの批判が多いのが現状です。

また、公民権の回復で利益を得るのは、公民権停止中の公職選挙法違反の元議員等が多いこともあり、政治恩赦との批判も有力です。

■2019年の恩赦は?

2019年に恩赦が実施されれば、1993年以来26年ぶりになります。

ただ、近年、犯罪被害者感情を重視する風潮を強まっており、また、公民権回復が政治利用との批判もあり、恩赦の対象は軽微な犯罪に限定されるものという見方が有力です。




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