見積合わせと入札の違いについて、ベテラン応札・参加実務経験者がわかりやすく説明

入札に関する情報

筆者はこれまで、実務で見積合わせ・入札を何十回も経験してきました。
その経験を基に見積合わせと入札の違いについてわかりやすく説明します。



見積合わせと入札の違いについて

告知・公示方法の違い

・入札
入札案件は、国・地方自治体問わず、原則として全て入札公告により告知されます。
入札には価格だけで落札業者を決める一般競争入札と価格に加え、提案書等の内容を審査し、総合的に評価する企画競争入札がありますが、告知・公告方法は共通です。

案件によっては、入札説明会が開催されます。

・見積合わせ
見積合わせは、国・地方自治体の担当者から、特定の企業に対して電話もしくはメールにより、直接、案件が通知されます。

特定の企業とは、具体的には類似業務に関する過去の実績や取引状況がある会社、各省庁・地方自治体において優良業者として認定・登録されている会社です。

実際、経済産業省では、省内に優良企業名簿のような情報が共有されていて、その情報を元にアプローチしてくることがあります。

従って、見積合わせの案件については、入札と異なり、特定の企業にしか、案件情報は告知・公示されません。

見積合わせでは、通知から業者決定まで一度も直接、顔を合わさないことも珍しくありません。

※見積合わせは断れるのか?
自分の興味のある案件だけ参加すれば良い入札と異なり、見積合わせは、国や地方自治体の担当者から直に参加を依頼されます。

そこで、見積合わせは断れるのか?と思われる方もいらっしゃると思います。
当然ですが、見積合わせはあくまでも依頼ですので、参加する義務はありません。
ですので、断ることは可能です。

ただ、経験からですが一度断ると以降、依頼されなくなる可能性が高くなります。
ですので、次善の策として、見積金額を高くして提出するという方法をとる企業もあります。
私見ですが、断るのではなく、まず落札できないような見積金額でもよいですから参加することをお勧めします。



仕様書の違い

・入札
入札案件でも大規模な案件ですと、業務の設計書といえる仕様書が100ページを超えることは珍しくありません。
また、仕様書について担当者が直接説明する入札説明会が開かれることが多いです。

・見積合わせ
見積合わせでは、仕様書のような定番の書類はなく、業務の概要等、数ページほどの文書が送られてくることが通例です。

予算規模の違い

ある業界のある業務では、以下のような予算が相場になっています。

・入札
300万円以上の案件

・見積合わせ
300万円以下の案件

業界・業務問わず、見積合わせの方が予算規模が小さいというのが通り相場になっています。

落札業者の決定方法の違い

・入札
入札に参加する企業に入札金額を電子入札や入札書によって応札させ、総合評価落札方式であれば、さらに提案書を提出させることで、落札業者を決定します。

入札結果は公開されるため、どんな企業が入札に参加したのか、応札金額はいくらか、落札業者が明らかになります。

価格のみの入札の場合は、最低金額で応札した会社が落札。

総合評価落札方式の場合は、入札金額(価格点)に加え、提案書の内容を評価、得点化した技術点を合算、総点数の高い会社が落札します。

入札手続きには、法的に公正さが要求されており、入札に関わる不正が発覚した場合、談合罪等で逮捕・起訴される場合があります。

・見積合わせ
国・地方自治体の担当者が非公開の形式で委託業者を決定します。
入札書や委任状等、様々な書類の提出を要求される入札と異なり、見積合わせは、見積書のみの提出です。

入札と異なり、自社以外にどんな企業が参加したのか、見積金額等は、非公開です。
また、結果は個別に担当者から通知されます。

見積合わせでは、入札のように最低金額で応札した会社が委託業者に選ばれるとは限りません。



発注側からみた見積合わせと入札のメリット・デメリット

入札のメリット・デメリット

・メリット
入札公告によって、入札案件に興味のある・対応能力のある企業を広く集めることが可能なこと

適度な価格競争が働き、入札金額の抑制が可能なこと

特に規模の大きな案件について、金額だけでなく、技術力等を同時に審査することで、予算規模・リスクに相応しい企業を選択可能なこと

・デメリット
入札を実施するためには、詳細な仕様書の作成、入札説明会の開催等、業務の負荷が大きいこと

入札公告により、名の知れた企業だけでなく、信用調査が必要なレベルの企業が参加してくる可能性があること

見積合わせのメリット・デメリット

・メリット
過去の実績等から、好ましいと思われる企業だけから、委託業者を決定可能なこと

入札に比べ業務負担が軽いこと

・デメリット
同じ業者ばかり委託することになりやすいこと

予算規模の大きな案件は、対象外であること

受注業者側からみた見積合わせと入札のメリット・デメリット

入札のメリット・デメリット

・メリット
落札業者が決定されるまでの過程の透明性が高く、公正な取引が可能なこと

入札公告により、様々な案件の情報を得ることが可能なこと

・デメリット
入札に参加する手続の負荷が高いこと

入札案件は予算規模が大きく、契約期間が長くても、契約完了まで、業務に関わる費用は一切支払いはされないため、特に小規模の企業には金銭的な負荷が高いこと

見積合わせのメリット・デメリット

・メリット
入札と異なり、限られた競争の中で、業務を受注することが可能なこと

見積合わせを通じて、省庁や地方自治体とつながりができること

・デメリット
入札と異なり、決定方法が不明確なこと

予算規模の大きな案件ではないので利益面でうまみがないこと



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