マルクスレーニン主義とは何か?中高生にもわかりやすく説明

歴史的用語の解説・説明

そもそもマルクス、レーニンとは?

マルクスレーニン主義のマルクス、レーニンとは人物の名前です。

 まずは、マルクスとレーニンがどんな人物なのか簡単に紹介します。

マルクスとは?どんな人物

マルクスは現在のドイツ出身のユダヤ人。

19世紀の哲学者、思想家、経済学者で”共産党宣言”を著した人物として
世界的・歴史的に広く知られています。

マルクスが提唱した科学的社会主義(マルクス主義)は、
その後のロシア革命や第二次大戦後の中国をはじめとする
社会主義国の誕生に大きな影響を与えました。

科学的社会主義とは、簡単に言うと
人類社会にも科学と同じような歴史的法則があり、
資本主義→社会主義→共産主義のように社会が必然的に発展していくという考えです。

レーニンとは?どんな人物

レーニンは、ロシアの貴族という恵まれた家庭の出身で成績優秀。
高校は首席で卒業したという明晰な頭脳の持ち主でした。

学生時代からマルクスの著書を通じて、
科学的社会主義(マルクス主義)に傾倒していきました。

レーニンの最大の功績は、革命家として、ロシア革命を主導・成功。
人類史上初めてとなる社会主義国家ソビエト連邦を誕生させたことです。

ロシア革命前後にレーニンはマルクス主義を独自の考えで理論体系や実践方法をまとめ、
マルクスレーニン主義とよばれる社会主義・共産主義に関する体系を作り上げました。

代表的な著作は『国家と革命』(1917年)です。



マルクスとレーニンの関係

マルクスとレーニンは同時代に生きてはいませんので、
師弟関係にあったわけではありません。
もちろん、面識もありません。

マルクスとレーニンは、企業経営に例えると
マルクスが提唱した経営・行動理念を基にレーニンが革命活動を行い、
科学的社会主義(マルクス主義)の理念に基づく国家ソビエト連邦を誕生させたという関係になります。

マルクスレーニン主義の定義

マルクスレーニン主義は、理論が中心であったマルクス主義を
レーニンがロシア革命を通じて実践的に発展させたもので、
資本主義社会から社会主義社会に移行するための理論・方法論や戦術のことを指します。

理論体系

マルクスレーニン主義の理論はマルクスが考案したもので、
”企業オーナー等の資本家と労働者間の経済格差を無くすため、
個人による土地の所有や企業経営を禁止。

国家が国策として経済を運営、国家から労働者へ賃金を平等に配分し、
格差のない社会を目指す。”というものです。

つまり、マルクスレーニン主義は、
国民の自由より平等の実現に重きを置く考え方です。

資産を今でいう国民全体でシェアしていくという思想が特長で、
経済・企業活動すべてについて国家が計画をたて、
経済を回していくという仕組みの実現こそが
人類社会にとって好ましいとする理論体系となっています。

方法論や戦術

マルクス主義は理論がメインでしたが、マルクスレーニン主義はレーニンが
マルクス主義を基にロシアの社会状況に合わせて
実際に使えるように具現化、発展させたものです。

具体的には、”革命を成功させる手段としては、
議会で多数派を握るのではなく、軍隊等の力で政権を奪取する”
”政権奪取後は、プロレタリアート独裁体制で政府を運営する”

というように社会主義国家を現実に誕生させるためにどうすべきか、
革命成功後の政府の運営方法ということに関わる戦術論・実践術が中心となっています。

社会主義・共産主義の提唱者はマルクスでしたので宗教でいうところの教祖的な存在でした。

一方のレーニンは、実際に社会主義国家を誕生させた革命家ということで、
教祖と並び立つような存在となったこともあり、
マルクスレーニン主義と呼ばれるようになりました。



資本主義国におけるマルクスレーニン主義

マルクスによると、資本主義国家では経済発展が進むにつれて、
成功した人とそうでない人で貧富の差が大きくなると説いていました。

従って、当初、マルクスは社会主義は当時のイギリスやドイツのような
先進的な資本主義国でまず実現すると考えていました。

しかし、実際には欧州では、遅れた農業国とされていた
ロシアで最初に社会主義が実現しました。

ロシア革命以降、現在に至るまで先進資本主義国から社会主義体制に移行した国は、
一つもありません。

そういう意味では、マルクスの予言は外れたことになります。

また、戦後の一時期フランスやイタリアで共産党は、
有力な勢力でしたが、1991年のソ連崩壊後次第に支持を失い、
現在ではほとんど影響力がなくなっています。

ドイツでは、マルクスレーニン主義を信奉する共産党は
民主主義に反するとして憲法で禁じられています。

マルクスレーニン主義の現代での位置づけ・影響力

現在の中国におけるマルクスレーニン主義の位置づけ

第二次大戦後に社会主義国家となった中国のトップに立った
毛沢東は、マルクスレーニン主義による国家運営を行いました。

1945年以降の中国共産党規約では、
「マルクスレーニン主義の中国における運用と発展」と記されており、
それなりの重要性があったことがうかがえます。

しかし現代では、中国は国家資本主義的な国に変容しており、
マルクスレーニン主義の影響は建国当初よりも著しく少なくなっています。

現代世界におけるマルクスレーニン主義の影響力

現代世界において、マルクスレーニン主義の影響力はそれほど大きなものではありません。

その理由としては、1991年にマルクスレーニン主義の理論・方法論の下に運営されていた
ソビエト連邦が崩壊したことが最大の理由です。

ソ連崩壊後、ポーランド・東ドイツ・ハンガリー等の東欧社会主義国家も次々と崩壊した
ことを目撃した世界市民の間で
”社会主義国家はダメな体制・失敗した国家”という認識が深まったことで
社会主義のバイブルともいえたマルクスレーニン主義の影響力も大きく低下、現在に至っています。




マルクスレーニン主義への批判・問題点についてわかりやす

マルクスレーニン主義にはいくつか問題点があります。

まず一つ目は、マルクスレーニン主義はみんな平等な社会主義を作るためのものですが、
ソ連や中国のように独裁政治を行うための道具となり、国民の言論の自由の抑圧・大量の政治犯の発生等
深刻な人権問題を引き起こしたことにあります。

実際、レーニンのあとを継いだスターリンは、長期的な独裁政治を行い、
国民を恐怖で縛り付けるような政治を行いました。
 
二つ目は、これは社会主義の問題点にもなりますが、経済発展が見込めにくいという点です。

実際、ソビエト連邦が崩壊した最大の理由は経済的に行き詰ったからです。

1970年以降から、社会主義国家特有の計画経済(国家が企業活動を含む経済活動を計画に基づいて運営する経済)
が機能せず、資本主義国との経済格差が大きくなっていました。

それが1980年代にさらに深刻になり、ついにはソ連は経済破綻のような状態に陥りました。

社会主義国家の中で経済的に最も成功した東ドイツ(ドイツ民主共和国)の指導者モロドウ元首相は、
自国の体制が崩壊した際、
”結局、教科書(マルクスレーニン主義)が間違っていたから
うまくいかなかった”
と述べています。

まとめ

 今回は、20世紀に大きな注目を集め、
社会主義を目指す人々に大きな影響を与えた「マルクスレーニン主義」について解説していきました。

近年は、社会主義的な国が少なくなっていますが、
マルクスレーニン主義が完全に世界的に無視されているというわけではありません。

特に最近、コロナパンデミックを契機にマルクスが見直される風潮が一部に出てきており、
マルクスレーニン主義がどんなものなのかその概要だけでも理解しておいて損はないと思います。




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