皆さんは地球最後の未開の地がどこにあるかご存じでしょうか?
地上にある全ての土地はほぼ解明されている中、生命の源である「海」は、約95%の領域が謎に包まれていると言われています。
水深200mより深い海は、光の届かない暗黒の世界「深海」となり、生身の人間には立ち入れない危険な場所です。
特に世界で一番深い海「マリアナ海溝」の最深部には、1960年以来たった4人しか到達しておらず、その数は宇宙に行った人数より少ないのです。(宇宙に行った人は566人)
この事実から深海は宇宙よりも遠い場所とされています。
今回は深海の中でもマリアナ海溝に着目し、地形や生物、謎の生き物「メガロドン」について紹介していきます。
マリアナ海溝とは?
地上で最も高い山は、ヒマラヤ山脈にあるエベレストですよね。
エベレストの高さは8848m、登頂には命の危険すら伴う過酷な場所です。
しかし海にはそんなエベレストですら軽々と飲み込むくらい深い溝があるのです。
それが西太平洋のグアム海近くにある三日月形をした海溝、「マリアナ海溝」です。
マリアナ海溝の最深部は約1万920mの深さがあり、「チャレンジャー海淵」と呼ばれています。
驚異的なのは深さだけではありません。水圧も強く108.6MPaと測定されています。
108.6MPaはどのくらいの水圧かというと、1人の人間の上にジャンボジェット機が50機くらい乗った状態らしいです。
地形のスケールも壮大で、マリアナ海溝にはチャレンジャー海淵レベルの深さの溝が2550kmにわたって続いています。
またマリアナ海溝自体は、北側は日本海溝を超えてアリューシャン海溝まで連なり、総延長は5000kmを超えると考えられています。
このように地上にある巨大な山々を、簡単に覆い隠すくらい深くて長いのがマリアナ海溝なのです。
マリアナ海溝の底はどうなっている?
2019年4月28日に1人の探検家がマリアナ海溝の底に到達し、4時間かけてチャレンジャー海淵を調査しました。
彼の名前はヴィクター・ヴェスコーヴォ(53歳)、アメリカ人の探検家で、単身で有人潜水船リミティング・ファクター号に乗り込みました。
ヴェスコーヴォは調査の途中、水深7000Mではユムシと呼ばれる生き物を、8000Mではシンカイクサウオという魚を目撃したといいます。
その他にはビニール袋やお菓子の包み紙などのゴミも目にしたそうです。
人間には到底耐えきれない過酷な環境でも生物は存在し、同時にプラスチックゴミによる海水汚染は、1万m付近の深海まで広がっていることがわかりました。
またチャレンジャー海淵に積もる土にも命の営みが存在しています。
実際に別の調査隊がチャレンジャー海淵の堆積物と、深海平原の堆積物を比較分析した研究結果があります。
深海平原とは水深3000から6000mの間にある最も平坦な土地のことで、地球の表面の約50%を覆っていると言われています。
平坦で山も谷もない砂漠が、海の中にどこまでも広がっているとイメージしてください。
もしたった1人で深海平原に取り残されたら、全く位置がわからず二度と出られなくなるかもしれません。
さて研究結果によると、チャレンジャー海淵の堆積物の方が深海平原の堆積物よりも、バクテリアなどの微生物の数が6.7倍も多い結果になりました。
また植物プランクトンに含まれているクロロフィルaやフェオフィチンなどの有機物も豊富に見つかっています。
この結果から、水深1万mのチャレンジャー海淵のほうが、水深6000mの深海平原よりも生物の代謝が活発である事実が判明しました。
マリアナ海溝の底にはさまざまな微生物が存在し、独自の生態系を営んでいるのです。
参考:世界で最も深いマリアナ海溝・チャレンジャー海淵の海底における、
活発な有機物の供給と微生物活性の発見
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20130318/
マリアナ海溝の生物
ここではマリアナ海溝や水深5000m以下で見られた、不思議な形をした生き物を3つ紹介していきます。
ハオリムシ
通称チューブワームと呼ばれる管状の奇妙な生物は、深海2500mにある熱水噴出孔の周囲に生息しています。
深海の底には海底火山があり、そこから熱い水が湧き出すため、周囲は60度程度の水温になります。
ハオリムシが生息しているのは、海底火山から温泉が湧き出す温かい場所なのです。
一見ハオリムシは口も消化管もないので植物のように思えますが、実はれっきとした生物です。
体内に化学合成細菌と呼ばれるバクテリアを保有し、化学合成細菌に熱水噴出孔から湧き出すメタンや硫化水素などを分解させ、有機物を供給しています。
メタンや硫化水素はハオリムシのエラから吸収されています。
通常の生物が餌にできる有機物が極端に乏しい環境で、ハオリムシは細菌やバクテリアと共生しながら過酷な環境に適応しているのです。
ジュウモンジダコ
ジュウモンジダコはタコの中でも最も深い場所に生息している種類です。
ジュウモンジダコは、タコの内臓をおおう外套膜が発達しており、巨大な耳のようなヒレを持っています。
巨大なヒレがディズニー映画の「ダンボ」に似ていることから、ダンボオクトパスとも呼ばれています。
生息している場所は水深7000m付近で、耳のようなヒレを使って泳いだり、独特な形をした足を使って海底を移動したりして暮らしているそうです。
深海に棲む生き物の中でも、ふんわりと丸いフォルムを持ったジュウモンジダコに不気味さはなく、むしろ可愛らしい感じがします。
シンカイクサウオ
こちらは淡いピンク色の可愛らしい外見をした深海魚です。
大きさは15cmから20cmと小さめで、半透明の皮膚を持っているため内臓は透けて見えます。
シンカイクサウオは別名マリアナスネイルフィッシュと呼ばれ、2014年にマリアナ海溝の8178m付近で発見されました。
シンカイクサウオの発見により、浸透圧の関係で魚が生息できる理論的な限界は水深8200mと仮説が立てられています。
水深8200mは大体800気圧になりますが、どのくらい重いのか、いまいちピンと来ないですよね。
800気圧は、1人の人間にゾウ1600頭がのしかかられるくらいの圧力だと言われています。
そんなわけのわからない圧力に耐える魚が、こんなに小さくて愛らしい外見をしているなんて生命の神秘を感じてしまいます。
巨大生物メガロドンは存在するのか?
映画「MEGザ・モンスター」でおなじみのメガロドンが、マリアナ海溝に生息していると訴える人は世界に数多く存在します。
メガロドンとは約2300万年前から360万年前に生息していた先史時代の絶滅種のサメです。
そのスケールは非常に大きく、成長すると体長18m、重さ48トンまで巨大化すると言われています。
現在の地球最大の生物はシロナガスクジラで、その体長は33mにまで達しますので、メガロドンがどれほど大きいかよくわかるでしょう。
さらに詳しく説明すると、メガロドンの背ビレは約1.62mと人間の背丈と同じくらいの高さになるそうです。
メガロドンは軟骨魚類なので、化石は歯しか残っていません。
今回の体長の結果は、残された歯の化石を現在のサメの歯と比較して推定したものです。
メガロドンは約600万~200万年前に絶滅したと言われています。
絶滅の原因はまだはっきりとしてはいませんが、今のところ2つの説が有力です。
一つは気候変動により海水の温度が急激に低下したため、変温動物のメガロドンは環境に適応できず絶滅したという説です。
もう一つはホオジロザメとの生存競争に敗れて絶滅した説です。
これはメガロドンが絶滅した年とホオジロザメが増えた年が被っていたため、徐々にホオジロザメに勢力を押されていったのではないかと推測されています。
どちらもまだ仮説の領域を出ておらず、メガロドン絶滅の原因はまだわかっていません。
絶滅の原因がはっきりとしていないため、メガロドン生存説を支持する声も大きいです。
生存説を裏付ける情報として、世界中にいくつか目撃情報が寄せられています。
有名なのはケープタウンで巨大なサメと思われる、背ビレと尾ビレが発見されたことです。
ただ海の中にいて全体像は見えないため、単に2頭のサメが離れた場所にいるだけではないかと囁かれています。
最近の目撃情報は2013年に南アフリカ沖で撮影されたもので、鯨を巨大なサメが襲っている様子がみられました。
その他にも写真や動画で巨大サメの目撃情報が収められていますが、いずれもデマだったり、別の魚だったりと、メガロドンと判断できるものではありませんでした。
また先ほど紹介した2つの目撃情報も、ただのインチキである可能性が高いです。
しかしマリアナ海溝はまだまだ未知の領域で、これからどんどん明らかになっていく事実がたくさんあることでしょう。
今後、マリアナ海溝に有人潜水艇での調査が増えてきたら、メガロドンの詳しい痕跡も発見されるかもしれません。
https://powerofdaizu.com/mystery/2018/09/06/328/
※メガロドンの目撃情報の写真です。
まとめ
今回はマリアナ海溝の地形や生態系、メガロドンの存在について説明してきました。
エベレストをすっぽりと覆うくらい深い場所が、海の中にあるなんて地球のスケールの大きさを感じてしまいますね。
また凄まじい水圧と暗黒の世界で、今も我々の知らない生物たちが静かに暮らしていると思うと、好奇心が掻き立てられます。
今はわからないことが多い深海ですが、次世代のエネルギー資源となるレアメタルが豊富に眠っているため、開発がどんどん進んでいくそうです。
深海開発が進行するにつれて、新種の生き物や驚きの地形なども明らかになってくるのは時間の問題です。
これから一体どんな事実がわかるのか楽しみですね。
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