イスラム国とタリバンの違いや特長・歴史についてわかりやすく説明します

長きにわたって続いているイスラム圏での紛争や対立は、
いろいろと理解するのが難しい状況にあるため、あまりよくわかっていない方が多いかと思います。

そこで今回はイスラム圏でも話題になることの多い代表的な二つの組織である
イスラム国とタリバンについてわかりやすく説明します。



イスラム国とタリバンの違いと共通項とは

 まずはイスラム国とタリバンがどのような組織なのかを違いや共通点を交えて解説していきます。

イスラム国とタリバンの違い①成り立ちの違い

 まずイスラム国とは、2014年にそのトップであるアブ・バクル・バグダディ氏が樹立を宣言した
シリア北部とイラク中部を領土としている自治区を言います。

なぜ自治区という表現をしたかというと、
イスラム国は世界的には国家として認められていないからです。

一方,タリバンはもとはイスラム過激派の教育を受けた学生による団体でしたが、勢力を拡大。
1996年から2001年まではアフガニスタンのおよそ4分の3にも及ぶ地域を統治していました。

しかし、2001年、アメリカ主導の軍によって統治者としての地位を追われました。

その後しばらくは鳴りを潜めていましたが、近年また勢力を拡大、
2021年8月15日にタリバンはアフガニスタンの全領土を
支配下に置いたと発表して大きなニュースとなりました。
 
イスラム国とタリバンの違いはイスラム国は世界的に承認されていない
空想国家のようなものであるのに対して
タリバンは2021年8月以降、アフガニスタンという独立主権国家を実質的に統治している点です。

そしてもう一つは組織の始まり方にも違いがあり、
イスラム国はアメリカなどに養成された義勇兵が発祥であるのに対して、
タリバンは学生の集団が発祥であるということです。

イスラム国とタリバンの違い②戦術の違い

イスラム国の戦争戦術は、元々義勇兵が始まりということもあり、
普通の軍隊に近い戦術で活動しています。

それに対して、タリバンはゲリラ戦戦略を中心に据えています。

また、イスラム国は、以前のテロリストグループが取り入れてこなかった
SNSを積極的に活用していることもタリバンとの大きな違いです。

具体的には、ツイッターやYouTube等を使用して宣伝活動を活発に行っています。
イスラム国が日本人や欧米人を捕らえて、SNSで公開したことは記憶に新しいことです。

イスラム国とタリバンの違い③アルカイダとの関係

アルカイダは、タリバンと緊密な関係を維持している一方、イスラム国とは敵対関係にあります。

特にアルカイダは知名度はタリバンより上ですが、タリバンに忠誠を誓う関係にあります。

イスラム国とタリバンの違い④日本との関係

イスラム国は、過去日本人の湯川さんや後藤さんを人質にする等、
宿敵アメリカの手先としての異教徒国の日本に対して敵対的です。

対して、タリバンはアフガニスタンに日本人の残留を要請する等、融和的です。



イスラム国とタリバンの違い④中国との関係

タリバンはアフガニスタンを2021年8月に再び、実質的に統治し始めたことを契機に
幹部が中国の外務大臣に面会するように中国に対して融和的。
中国国内のイスラム問題でもあるウイグル問題には言及していません。

対して、イスラム国は中国に対しても批判の目を向けており、
ウイグル問題の進展によっては、強硬な態度にでる可能性があります。

イスラム国とタリバンの共通項

イスラム国とタリバンの共通点は、どちらもイスラム教のスンニ派(スンナ派)であるという点です。

イスラム教には大きく分けてスンニ派とシーア派があり、
スンニ派が多数派でシーア派は少数派です。

もう一つの共通点としては、どちらもある一定範囲の国や地域を支配下に置いており、
統治しているという点だと言えます。

イスラム国とタリバンの関係は?

イスラム国もタリバンも同じイスラム教スンニ派ではありますが、両者は敵対関係にあります。

これは現在タリバンが統治しているアフガニスタンでも同様で、
アフガニスタンにいるイスラム国とタリバンは敵対関係にあります。

タリバンがアフガニスタンをジハード (聖戦) で支配するのではなく
アメリカとの和平交渉をしていたことを、イスラム国は「背教者」として非難しています。

つまり、イスラム国からみるとタリバンは、
イスラム教の道を外れていると看做しており、敵対関係にあります。

だからこそ、アフガニスタンの首都カブールの国際空港周辺で2021年8月26日、
過激派組織「イスラム国」の地域組織が
米兵を含む多数の人々が犠牲になった自爆テロを敢行したのです。

イスラム国とタリバンの勢力範囲

 さきほどの説明で少し出てきましたが、ここからはイスラム国とタリバンの勢力範囲を説明していきます。

イスラム国の影響下にある国や地域

イスラム国はイラクのフセイン政権の一部と合体してできた自治政権でありますので、
イラクの一部を影響下に置いているのはもちろん、シリアの一部もイスラム国の影響下にあります。

イスラム国自体は独立を宣言していますが、世界的には認められていないので
イラクとシリアの一部はイスラム国の自治区であると考えるとよいでしょう。

タリバンの影響下にある国や地域

タリバンはアメリカが撤退したのをきっかけにアフガニスタンを制圧し、
現在アフガニスタンのほぼ全土を影響下に置いています。

今後の情勢の変化でまた動きはあるかもしれませんが、
タリバンは基本的にアフガニスタンを中心として活動しているので、
支配地域はアフガニスタンであると考えていいでしょう。

今回は中東の複雑な関係の一部をなしているイスラム国とタリバンについて解説していきました。

この地域の情勢は頻繁に変わっているので、来年になったらまた勢力範囲は変わっている可能性が高いです。

またイスラム過激派組織は今後核兵器をもつ可能性も一部では示唆されているため、
今後も注視すべきものだと筆者は考えています。




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