傀儡政権(国家)とは?植民地との違いを交えてわかりやすく説明

政治用語の違い

主権と政権(国家)の関係とは

傀儡政権(国家)を説明する前に、まず国家と政権の関係について話をしていきましょう。
というのも、本内容は「国は誰のために存在するのか?」という話を避けては通れないからです。

日本では民主政がとられています。

民主主義国家では国の主権者は私たち国民です。

王政にしても民主政にしても、主権者の意見を反映し、実行する組織が必要になります。

これが政権(政府)です。

政権とは「実質的に政治を行う権力を国の主権者から与えられた組織」です。

政権は「主権者の利益を第一に考えなければならない」ということです。

国はあくまでも主権者のものであり、政権はその管理人のようなものなのです。



傀儡政権(国家)とは?

ところが傀儡政権(国家)はこの原則を無視して
主権者ではない外国勢力の利益を第一に考え行動します。

傀儡とは操り人形のことです。

操り人形は人の動きを真似て動きますが実際には人形師に操られています。

人形劇の人形と人形師の関係を国家に当てはめて
まるで操り人形のように他国の意思によって動く政権のことを「傀儡政権」と呼びます。

傀儡政権は政権自体に決定権がなく、その政権を裏で支配する外国勢力の意向に沿う政策を行います。

そういう意味では傀儡政権下の国では真の主権者は
その外国勢力であるということができるかもしれません。

傀儡国家は他の支配方法と何が違うのか?

傀儡国家は外国勢力の支配を受けているという点で
自国の主権が奪われているといえますが、植民地などとは区別されます。

最大の違いは、外見上は独立国家 (のように見える)ということです。

例えば、植民地は外国勢力から移住してきた人々が政府を樹立して
先住民を排斥するなどの差別的な扱いをすることがほとんどです。

最も分かりやすい例としてはアメリカ大陸における
移民と先住民の関係が挙げられます。

先住民は独自の文化や統治制度を持っていましたが
主に欧州からの移民は、それらを破壊し植民者による政府を樹立しています。

植民地が成立する前と後ではその地域の文化や統治制度、
支配層が大きく異なることがほとんどです。

一方で傀儡国家では、その国の政治制度や支配層は
基本的にはそのまま活用できるのであれば
わざわざ従来の制度をつくりかえることはしません。

重要なのは政権が自分の支配下に置けるかどうかだからです。

従来の制度をそのまま活用できない場合でも
政府のメンバーは現地の人間から選ばれ、
形式的には独立国家として存在しています。

つまり、直接統治をすることなく、あくまで現地国の統治制度や現地国民などを利用して
間接的に統治することに傀儡政権(国家)の最大の特徴があります。

あくまでもイメージですが、SF映画なんかでエイリアンに
身体を乗っ取られる状況に近いかもしれません。

身体はそのままだけど意識だけ支配された状態という点では共通していますね。



傀儡政権の役割とは?

傀儡政権の役割は、傀儡政権を裏でコントロールする
国家の国益に資するために存在することが役割なのです。

具体的には、敵対する国との中間地点にある国に傀儡政権を樹立することで
自国への敵国からの軍事的脅威を減らすというようなケースが典型的です。

しかし、隣国だと逆に植民地という手法は、
その国民の反感を買うことになり、新たな敵国になりかねないため、取りにくいのです。

ですので傀儡政権というような統治方法が有用とされてきたのです。

そんな周りくどいことせずに直接統治してしまった方が
何かと都合が良いじゃないかと思われるかもしれませんが、
傀儡政権を立てることはその国を支配する外国勢力にとってはメリットがあります。

まずは国内の反乱を抑え込み支配しやすくするという点です。

例えば、日本に外国勢力が来て「今日から我々が支配する!」
と言われたら皆さんはどう思いますか?

突然やってきた部外者が自分の都合の良いように
物事を進めようとすれば当然反発が生まれやすくなります。

その不満が爆発すれば国民全体が
外国勢力を追い出すために団結をしようとします。

しかし、表向きは自国の人がリーダーとして存在していれば
実際には外国の支配を受けていたとしてもそれが分かりにくくなります。

人は目に見えない相手をはっきりと認識しにくいのです。

さらに、仮にその事実に気づいた国民がいても団結がしにくいのです。

なぜならば、少なくとも傀儡政権とその関係者は
自国の国民でありながら外国勢力の支配に協力することで見返りを受けています。

彼らは外国勢力がいなくなれば
今度は自分たちの地位も危うくなるので団結されるのは都合が悪いのです。

つまり、外国勢力が反対勢力に直接弾圧を加えなくても
傀儡政権側が代わりにやってくれるというわけです。

もう一つのメリットは国際社会の批判を受けにくくするというメリットがあります。

現代においては他国が別の国の政治を支配することは禁止されています。

傀儡政権下の国では見た目だけは
その国の代表者が政治を行なっています。

他国の軍が侵攻したりして直接支配しているわけではないので
国際社会も傀儡政権だということは分かっていたとしても批判を受けにくいのです。



傀儡政権の一例

実はこの傀儡政権による支配を最も得意とした有名な国のひとつが大英帝国(イギリス)です。

世界で最も早く産業革命を成功させたイギリスは世界各地に傀儡国家や植民地を持ち、
「19世紀はイギリスの時代」といわれるほどの繁栄を遂げます。

イギリスが支配した国や地域にはすでに
異なる歴史や文化を持つ民族が住んでおり、それらを支配する統治者がいました。

イギリスは支配地域の多くで彼らを権力の座から追放し、直接統治するのではなく、
意のままに操れる傀儡国家として存続させる統治方法を取りました。

現在のインドにあたるムガル帝国などはその有名な例の一つです。

実質的な決定権は支配国であるイギリス本国が握っていましたが、
形式的にはムガル帝国の皇帝が統治する形で存在し、
1858年にイギリスによってムガル帝国が解体されインド帝国が成立するまで存続していました。

また、その他にも大日本帝国時代に建国された満州国なども傀儡国家として挙げられます。

まとめ

①「傀儡政権」とは、
まるで操り人形のように他国の意思によって動く政権のことを意味します。

②「傀儡政権」と植民地の違いについて
植民地はその支配者が現地の統治者を追放し、政府を樹立。
先住民を排斥するなどの差別的な扱いをするのに対し、

「傀儡政権」では現地の統治機構をそのまま維持しますので、
国民を排斥するわけではありません。

ですので植民地と異なり、外見上は自国民によって
統治されているように見えることが最大の違いです。




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